68話
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その右腕にはWSプラン406「アームドアーマーBS」、そして左腕にはWS407「アームドアーマーVN」が装備されていた。
視界の中であれこれと指示を出していた整備兵の視線がつとマーサに向く。
「いらしていたのですか?」
「ええ、そろそろ休暇も終わりですから―――最後に見ておこうと思ってね」
なるほど、と納得したように肯いた整備兵―――モニカは、ふと何かに気が付いたらしく、ヘルメットに手をかけた。もうこの区画には酸素が十分に満ちているのだろう。モニカはそのまま気兼ねなどなくヘルメットを脱ぐと、2、3度首を振って首元に絡まった黒髪を広げた。
セミロングの髪を後ろで1つにまとめるモニカの姿を見ながら、マーサも鬱陶しげにヘルメットを脱いだ。
無重力中の中では長髪はふわふわとあちらこちらに広がっていく。
《Sガンダム》の胸部ユニット―――コクピットハッチが開き、中に整備兵数人が滑り込んでいく。代わるように無重力を泳いで這い出した《Sガンダム》のパイロットは、せり出したコクピットハッチの縁に手をかけて身体の移動を止めると、ハッチの裏を蹴って20mを垂直に降りていく。
スタッフがパイロットの元に近づいていく。並んだところで、そのパイロットが酷く小さいことに気が付いた。
ドリンクやらタオルやらを手渡したスタッフに比べて、2まわりは小さい。それこそ150cmをちょっと超えたくらいしかないのではないか。背後に黙然と佇立する巨大な体躯を操るその小柄なパイロットの顔を思い出していると、そのパイロットがヘルメットに手をかけた。
ヘルメットを脱いで、頭をすっぽりと覆うヘアカバーに手をかける。頭から外すとすぐにゴムが縮まって、青竹色の布がアルマジロのようにくるり身を丸める。つられ、銀色の髪が無重力中を夢のように広がっていく。ノーマルスーツの胸元から取り出した黒いリボンを口にくわえながら両の手で一つの纏め、馬の尻尾のように髪を縛り上げていく―――。
少女。そうとしか思えない幼い顔と彼女はスタッフと少しだけ言葉を交わした後、その紅い眼差しがこちらを向く。
正確には、マーサの隣にいたモニカに視線を向けたのだろう。モニカが手をひらひらと降ると、パイロットも表情に柔らかさを浮かべて、ぶんぶんと手を振った。
脳裏に浮かんだのはタペストリーだった。いつ作られたのかも、誰が作ったのかも不明な6枚の連作。赤い下地に無数の草花が咲き誇り、一角獣と獅子に守られるようにして一人佇む白い貴婦人―――。
一人顔を顰める。見当違いな想像だ。彼女はあくまで貴婦人ではなく、一角獣か獅子のどちらかの存在であろうのだから―――。
知らず、床を蹴っていた。スタッフがマーサに気づき、身を強張らせる。少女はモニカを視界に入れても特に身じろぎもせず―――というより、ぽかん
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