67話
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んだかずれている―――奇妙、だった。
感じた違和感を打ち消すように、クレイはスプーンをクリームの中に埋没させる。中から掻きだすようにして白い塊を掬い上げると、クレイも変に緊張しながら口に入れた。そのせいか、なんだか味がわからない。
「君はそういうものが好きなのか?」
圧倒されたように目を見開いたガスパールがその白い山を眺める。
「好き、というわけではないのですが―――気分、でしょうか。それにあまり甘くありませんし」
「―――これが甘くないのか。若さだねぇ、俺は胃がもたれそうだ」
胃のあたりを撫で乍ら、大仰に顔を顰めて見せる。やはりこういうフランクさが隊長としての1つの在り方なのだろう。
自分の隊長を思い浮かべる。彼女は、ガスパールとは正反対のイメージだ。
「―――一皮剥けた、か?」
パンケーキにクリームをこんもりと乗せ、無理に口に押し込んでいる時に、ガスパールがそんなことを言った。
その声は―――その声は、何故だろう、何故だろう、穏やかで大人の寛恕を感じさせる声なのに―――。
「以前に見た時とはどこか違う。実戦を経験したから、だろうな」
うんうん、と肯くガスパールの声は、やはり心底嬉しそうといった風だ。別に縁もゆかりも無いような間柄なのに気に掛けてもらえているという事実を素直に受け取れている。もちろん、やはりまだ抵抗はあるが。
「そういうものでしょうか」
「あぁ。今まで色々な人間を見てきたが、実戦を経験して生きて帰ってきたとしても軍人を続けられなかった人間は少なくなかった。PTSD―――心がやられてしまうんだ」
ガスパールが苦々しい表情を作る。
悔いや怒り―――隊長、という立場を経験しているが故の苦悩なのだろう。なの、だろう―――。
でもやっぱりどうして、眼前の男の苛立ちがどこを向いているのかわからないのだろう? クレイは、自分の裡に不意に訪れるこの奇妙な感情―――予感に、気味の悪いものを感じた。
「その点、君は強かったのだろうな。こうして、良い顔をしている―――それが何よりのエビデンスだ」
クレイをリニアニティに見つめるガスパールの視線に思わずたじろぐ。
「私は強くはありませんよ。実戦中は薬物投与でなんとか自分を維持できただけです。戦闘後なんて病院送りでしたから―――」
ガスパールはどうやら自分を買ってくれているらしい―――それは、嬉しいことだが、やはり慣れていないせいかどうにも居心地が悪かった。
口の中にクリーム塊を運びながら、クレイは逃れるように視線を彷徨わせて、壁にかかっている薄っぺらなテレビに目を留めた。
ニュース番組らしい。宇宙歴0093年に終結した第二次ネオ・ジオン抗争の特集番組のようだった。仰々しい軍服を着た男―――シャア・アズナブルが行った演説の映像が流れ、若手の芸能
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