67話
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い顔してるぜ」
親しみ深げな、ニカっとした笑みを見せるヴィセンテ。そう言われてもやはり実感はなかった―――が。
そう言われて、クレイは少しだけ素直にその賛辞の言葉を受け入れられた。自分で気づかぬ間にどこかに違いが生じたのだろう。人間なんて得てしてそんなものだ、自分だけでは自分の適応には気が付けない。
自分の手のひらに目を落とす。
白いグローブに包まれた自分の手。
前を見る。広々としたホールには、時間のこともあってほとんど人が居ない。そんな中、カーボンブレード同士がぶつかり合う剣戟の音が連続してホールを裂く。
オーウェンともう一人、他部隊の男の模擬刀がぶつかり合う。
その巌のような見た目に反して―――否、むしろその頑強な肉体通り、と言うべきか、嵐の如く苛烈な斬撃を見舞うオーウェンは、やはり表情筋の動かし方を忘れてしまったかのように表情を動かさない。
かといって、それは手を抜いているわけではないのだ、と知ったのは数か月ほど昔のことである。彼は、ただひたすら黙然と己の為すことを為しているだけなのだ―――まるで機械のように。
「そういえば、なんですけど」
「なんだ?」
「コロニー守備隊の教導任務って来月の中ごろでしたよね?」
はて、とヴィセンテが思案気に天井を見上げる。クレイは、開いた手を握りこんでいた。
整備兵はその仕事柄上、物資の供給などに常に目を光らせている。都合、実機を稼働させるスケジュールなどは数か月先まで頭に叩き込んであるのだ。
十秒ほども考えた後、ヴィセンテは確かそうだったな、と腕組みして壁に寄りかかりながら応えた。
「でもなんだ? お前のことだからそんくらい記憶にありそうなもんだけど」
「一応って奴ですよ。俺最近物忘れが多くて」
「ふーん。確かそれで合ってたような……いや、ちょい待ち。そういや茨の園に物資搬入する都合でスケジュールが延期になったんだった」
言いながら、ヴィセンテは少しだけ眉を顰めた。それが気になってヴィセンテの顔を眺めると、黒髪の男は肩を竦めてみせた。
「茨の園に物資搬入するっていうから最近物資の搬入のスケジュールが変わったらしくてさ、延期するんだってよ」
それは、知らない情報だった。
握った手の力が抜ける。そうですか、と応える声も表情もさして気にしている風でもなしに、左手に握った紙パックをぐしゃりと握って潰した。
まだ彼女に会っていない。セキュリティクリアランスの関係で、流石にコロニー守備隊の情報の閲覧は行えなかったのだ。もちろんコロニー守備隊の駐屯地―――ニューエドワーズに加えて、荒廃した小型のコロニーをそのまま廃都市戦闘用の演習場とするために再利用する形で復興されたプレサイド8、2バンチコロニー『ニューメリーランド』やらに存在している駐屯地にいきなり赴くわ
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