67話
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みに足を取られながらもなんとか立ち上がったところで終わりだった。
「武器を捨てて投降しろ。命は奪わない」
背後から首筋に模擬刀を当てたオーウェンの声が耳朶を打つ。防護用ヘルメット越しに、自分の首筋に確かに刃が当たっているのを視認した。
そのオーウェンの声が酷く事務的なのがなんとなくおかしくて、クレイは両手に握っていた槍を手放した。
「負けました。投降しますよ」
からん、という槍の軽い音がホールに響いた
ホールの端にどっかりと座り、ヘルメットを脱ぐ。顔中を覆っていた熱気が一気に外気へ逃げていき、ひんやりとした空気が肌を突いた。
「お前らってMSのパイロットなんだよな? よくやるよ」
暇だから、という理由でクレイとオーウェンの模擬戦闘を眺めていたヴィセンテが一言。クレイからヘルメットを受け取り、代わりに良く冷えたドリンクのパックを放り投げる。感謝と共にそれを受け取り、そのパッケージを眺めてみる。
これまた奇怪な文字とモンスターが饗宴―――狂宴を繰り広げ、新商品の文字がどこか場違いな風にでかでかと書かれていた。
酷く早いペースで新商品を開発しているが、こういう飲み物を開発しているどこかの部署だか民間の企業だかは暇なのだろうか? いやまぁ、『これ』を開発するのだって厳しい審査なりなんなりを潜り抜けているエリートなのだろうが……。
「まぁ、MS動かすのもレバーとスロットルとペダルだけで出来れば必要ないんでしょうけど」ストローをパックの銀紙の部分目掛けて突き刺し、ストローに口を付ける。頬を萎ませて中身を吸いだせば―――おや、旨い。
「思考制御ったって何割かだろ? こんな朝っぱらから汗だくになってやるほどかよ?」
「必要ないと言えば必要ないんですけどね。実際、装甲剣術なんて士官学校の時にやったきりで後は全然やらない人だって多いそうですし、実際の機体の挙動に反映される割合だってそう多くは無いですから」
「なるほどね」ヴィセンテが壁に寄りかかる。「「そう多くない」部分をきっちりやりたいと」
ええ、とクレイは肯く。
ニュータイプ用でも間接的な思考制御は導入されているが、思考制御が担う割合は左程大きくはない。やはり機体の挙動を占めるのはIMPACシステムなどの、機体側の自動の機体挙動なのだ。
それでも、多少なりとも向上し得る余地があるならそこに全力をかける。たとえそれが数パーセントほどだとしても、だ。それが、教導隊という地位にある人間の責務でもあるし、その地位に自分を近づけなければならない。
「なんかお前、変わったな」
ヴィセンテが剣戟を眺めながらそう言ったのは、パックの中身を丁度空にした時だった。
「そうですか?」
とんとその実感は無かった。
「おう。なんつーのかな、肩の力が抜けたっつーのかな。お前、良
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