67話
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の差と言えばそうであろう、だがそれは一要因でしかない。
「来ないのか? それでは槍兵の名が泣くぞ」
小ぶりなサーベルを肩に乗せ、オーウェンが挑発気味に目を細める。それがなんだか酷く芝居臭いのは、何かの台詞の真似でもしているからだろう。クレイはそれがなんだかわかる気がしたが、結局なんだかわからなかった。
言葉は要らず、クレイは足場を蹴り上げた。元々生身における戦闘訓練のために作られたホールはクレイの身体を軽々と跳ね挙げ、数m先のオーウェンの元へ一息のもとに肉迫する。
槍の形状から、主要な攻撃手段は刺突―――と思われるが、その実槍の主な挙動は薙ぎ払いにある。強靭な肉体から放たれる鋼鉄の殴打は、人間の肋骨を容易に破壊して余りある威力を持つ。
片手で振るっているとは思えないほどの速度で振りぬかれた一撃を、オーウェンは両手で構えた剣で受け止める。遠心力も加えた一撃を、鼓膜を突き刺すような激しい金属音と共に顔色1つ変えずに破壊的な一撃を平然と受け止める様には戦慄を覚える。
だがそれで終い。槍のデメリットは、まさに一撃ごとの挙動の大きさ故に次の攻撃に移るまでにどうしても間隙が生ずることにある。槍を双頭に構える利点は、まさにそこ。一撃打ち込んだ隙に間髪入れずに一撃を叩き込み、その隙にもう一撃の準備を済ませるのだ。
クレイはその僅かな間隙すらも赦さず、左腕に握った長槍の刺突をその巨漢の右胸目掛けて叩き込む。
槍の突きはほぼ挙動がないうえに、その『点』の攻撃は打ち込まれた後に躱すことなどほぼ不可能といっていい。
空気を切り裂き、今やオーウェンと討ち果たさんと突撃する模擬槍の切っ先は―――。
されどその直後に虚空を穿った。
直撃の寸前、剣から右手を離したオーウェンはほんの僅かだけ―――それこそその槍がボディアーマーに掠るほどの身動ぎだけでそれを躱すや、即座に模擬槍を小脇に抱えるようにして挟み込み、その棒にぐるりと右手を絡ませた。
それこそ1秒ほどすらない一瞬の出来事に瞠目する。だがその驚愕もまた秒ほどの長時間も持続せず、クレイは既に引き戻した槍の一撃を叩き込まんとし―――。
「げ!?」
流石に、それには驚愕どころではなかった。
槍を梃代わりにし、右手だけでオーウェンはクレイの身体を宙に浮かせた。右腕こそぷるぷると震えていたが、相変わらずその鋭い目つきと厳つい表情をぴくりとも動かさしていない。
手を離さなければ、と思ったときには遅かった。大股で大地に踏ん張ったまま、オーウェンはぐるりと身体を回しながらクレイの身体を宙に放り出した。
それこそ数mは飛ばされたであろう、着地時になんとか受け身を取りながらも、殺しきれない衝撃が強かに身体を打ち付ける。
肺を握りつぶされ、一気に空気を抜かれた様な痛撃に思わず咳き込む。鈍い痛
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