65話
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く。
もっと単純に考えることもできる。
だってほら、道路の先に目を向ければ―――。
※
意識は、クリアだった。
浅い眠りと覚醒を繰り返すこと何度目か、疲れたと文句を言うように欠伸がせり上がってきたが、脳みその方はまだクレイの身体を明瞭な意識の統括のもとに置いておきたいらしい―――。
クレイは、やや輪郭がぼやけながらも普段通りの明晰さの意識の中で、眼前の物体に顔を埋めた。
擽るようなチクチクするような銀髪の感触に、煽情的鎮静的なその彼女の薫り。背後からエレアの身体を抱くようにしながら、クレイは彼女の後頭部から項に顔を当てる。
彼女の柔らかいお腹に当てた両手のうち右手を脇腹の方へ回して、そして下半身へ。臀部の感触を肌に触れさせ、そして大腿部に忍ばせていく。
彼女の白い太股を幻視する。一見蝋か瀬戸物にでも見える無機物的な白さの肌のすぐ下を網目のように奔る蒼い血管。どろりとした熱の液を運ぶ器官、生命の鼓動の管。まるで血管の1本1本を愛しく思うように、指の腹を微かに触れさせて彼女の足の肉の柔らかさを蝕知し、そうして内腿へと這わせながら手のひら全体で掌握の挙動を取り―――。
クレイは、なんとも言えない溜息を吐いた。彼女の下半身に浸透していた手も、お腹を抱いていた手も退け、彼女の髪に埋めていた顔も離すと、音も無く素早く上半身だけを起こした。
そのまま営みを継続させるには、彼の意識ははっきりしすぎていた。ぐしゃりと髪の毛を掻き毟り、殺しきれない奇妙な気恥ずかしさが頬を緩ませ、クレイは何も言わずに天井を見上げた。そして、首に手を当てて、 壁に身体を寄りかからせる。ひんやりとした感触が、火照った身体に丁度良かった。
枕元の時計を視線だけの一瞥で見る。消灯時間は当に過ぎ、もう起床時間まで数時間ほどしかない。睡眠を取るのが最も賢明な判断だとはわかっていたが、眠れないのはしょうがない。
取りあえず、クレイは起きることにした。無為な時間の消費は、やはり気質に合わないのだ。
ベッドからそろそろと抜ける。汗のせいで着るに絶えないシャツを脱ぎ、代えを着る。1人用のベッドに2人で寝ているのだから熱いのは当たり前だが、それにしたって最近熱いと思う。気候的にはもうあと1か月もすれば雪が降るらしいのだが―――。
乾燥した服を着て、ぽつんと突っ立ってみれば少しは涼しい。理性はなおのこと冷え冷えしていき、身体は嘘のように重力を感じない。かといって地についていないわけでもなく、彼は確かに大地の存在を感じていた。
己の為すこと。靄の晴れた意識は、それがなんであるかを把握していた。
カラーボックスから分厚い文庫本を抜き取り、それをデスクに置きながら椅子に座る。
デスクの端で、途中で首を折ったデスクライトのスイッチを入れる、光量をライトと首
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