53話
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(《ガンダムMk-V》、帰投しました! パイロットは両名とも無事です!)
「医療班を出しておけ! 08の生体データからして緊急の処置が必要だぞ!」
怒声を上げたエイジャックスの艦長は、苦虫を潰したような顔をした。
新兵が初の実戦でダウンする―――よくあること、と言ってしまえばそれだけだが、そのダメージを減らすのもまた上に立つ人間の当然の責務である。
その他飛び交う情報を受け取っては素早く指示を出す中、艦長の視界の中で1人の動作がやけに克明に映った。
ノーマルスーツ越しでもその人物が誰なのかは了解した。バイザー越しに見える青い目―――アヤネ・ホリンジャーの目だ。
(サイコ・インテグラルシステムの起動を確認しました。サイコミュの実証試験、開始します)
彼女の声は至極落ち着いていた。というより、己の我を殺しきった声だった。
艦長はそれに気づきながら、ただ眉を険しくして肯く。
サイコ・インテグラル。立ち上がったことにすら気づかないまま、ブリッジの強化ガラスの遼遠へと視線を投げた。
軍人になって果たして何年か。戦場にあって、その言葉は何度となく耳にした言葉だった。そして多くの場合、それは男にとってかかわりのない遠い出来事の話でしか、なかった。
距離にして何百キロ先の出来事なのか―――艦長の網膜に幻影となって現れた少女の姿に、臓腑から苦い液がせり上がってくるのをありありと知覚した。
時代の変遷。新しい時代の幕開け―――と、そんな陳腐な言葉で語って良いのだろうか。
「始まったか―――」
※
プルートは一瞬、意識を喪った。どれだけの時間だったか、だがハッとした時には眼前にサーベルを振り上げた《ジェガン》が迫っていた。
《ドーベン・ウルフ》がサーベルを引き抜く間もなく割って入った《ザクV》が《ジェガン》と鍔ぜり合う。
未だ漠とした感覚に戸惑い、きりきりと歯ぎしりしながら《ドーベン・ウルフ》を横に滑らせ、ロングバレルのビームライフルの銃口を遥か遙遠の《FAZZ》に重ね合わせる。
射出されたインコムの対応に手間取ったその巨漢がプルートの殺意を感じる暇は、無かった。
亜光速の殺戮が《FAZZ》を貫き―――爆発した。
これで2機―――グレネードでフロントアーマーを吹き飛ばされながらも、《ジェガン》の右手腕を切り飛ばした《ザクV》の姿が嫌に物理的存在として視神経を発火させる。
こんなことは無かった。戦場に在って注意力が散漫になったことなど―――。
操縦桿を握る手が微かに震えていた。
プルートは困惑した。恐れなど抱いていない―――欠片ほどもそんな感情が惹起していない筈なのに、己の身体(しんたい」は確かに何かに恐怖していた。
―――注意力が散漫? 違う、と思った。
形容しがたい不安を感じ、縋るよ
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