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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
53話
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メットに内蔵された無線に声をかけた。
「SHQ、こちらエンタープライズ」
(こちらSHQ、どうした)
 ミノフスキー粒子の影響がない場での音声は驚くほどクリアで、無線越しでもオペレーターのねちゃねちゃとした声が聞こえるくらいだった。
「エンタープライズ、『ウォーターバック』確認した。これより確保する」
(SHQ了解した)
 オペレーターの声はやはり抑揚すらなかった。それに対して自分は、と目出し帽の中で自嘲気味に思った准尉は、紙媒体というアナログの地図を取り出した。タブレット端末はいざという時使用不能になる恐れがあるからだ。
 その紙上の情報を素早く読み取り、侵入経路を組み立てた班長は、行動に移す前に今一度だけ顔を上げた。
 真紅のMS―――MSN-04《サザビー》。既に朽ちたその巨躯を睥睨するでもなく見下ろした准尉は、後ろ髪引かれる思いを感じながらも、2秒後には肉で出来た精密機械へと戻っていた。
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