53話
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うに視線を彷徨わせる。
CG補正された偽物の宇宙。その向こうに横たわる本当の蒼穹の、どこか。プルート・シュティルナーという存在を『吸収し写し取っている』何かが、この蒼い世界にひっそりと潜んでいるようで―――。
16歳の小さな少女は、弱弱しく慄いた。
※
頭部胴体両肩左腕右腕腰部両脚全てに襲い掛かる剣の速度は以て神速。
胴を狙うマシンキャノンの専心は須らく絶殺。
その全てに一対の戦斧を重ね、その度に干渉光が咲き乱れる。さながら連続して花火が咲くように日輪を迸らせ、干渉光の尾を引いた2機のMSがデブリの中を駆けていく。
反射反応すら置き去りにし、己の直観だけで《リゲルグ》を操る。超近接戦闘はそれだけで《リゲルグ》の体躯を軋ませ、機体のダメージを蓄積させる―――だが、一瞬でも離れればその瞬間にファンネルが襲い掛かる。あるいは、ハイメガキャノンが鯱さながらに食らいつくか。どちらにせよその瞬間に己の存在が消えるのだけは間違いない。
エイリィは大丈夫なのか。レーダーに一瞬だけ視線を走らせる暇も無く、まだ青い光点が存在しているのかすらもわからない。
袈裟切りにビームサーベルが弧を描く。メガ粒子の刃が接触し、鋭角的な光が網膜を突き刺す。マクスウェルの網膜は、しかしその見慣れた干渉光ではなく、蒼い光を鮮やかに映していた。
漆黒の機体から溢れ出る蒼い燐光。敵意的などという次元ではない。もっと超越的形而上的畏怖を抱かせる神的な蒼い炎を熾らせ、ただ死を伝えるその様は―――。
ざわと悪寒が首筋を舐めた。あまりにも性に合わない思考、だがそれ故に感じる敵の異様さ。
単なる世迷言と振り切るように、一気にスロットルを上げフットペダルを踏み込む。超至近でスラスターの閃光を爆発させ、まるで人間がするように体当たりをしかける。その奇襲を、しかしまるでその攻撃が来るのをわかっていたかのようにスラスターを噴射させた《ゼータプラス》は《リゲルグ》の推力をも味方にし、わざと弾き飛ばされるように後方へと飛びのいていく。
赫焉の瞳が嫣然と嗤う。その額に装備された巨大な砲口から屹立する大出力のメガ粒子の濁流が《リゲルグ》もろともマクスウェルの身体を飲み込んで―――。
《ゼータプラス》が一瞬だけ身動ぎする。
次の瞬間に、漆黒の《ゼータプラス》が居た座標目掛けて幾条もの閃光が殺到した。
※
ただ、人を狩ることが彼らの存在意義だった。
廃棄されたコロニーの中を浸透していく人間たちの挙動には一分ほどの無駄も無かった。
大通りを駆け抜ける際は迅速に、出会った生命体は何者であろうとも容赦なく物質存在へと還してやる。彼らが生身の人間を殺傷するのに必要な弾丸は、多くて3発だった。
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