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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
52話
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先鋭化した感覚(ムーサ)が何かを教えようとしているのに、その輪郭がぼやける。
 蒼いだけの世界。星々の光は一見密集しているように見えて、その隣り合いは数光年にも及ぶ仲睦まじ気な寂しいものだ。そんなものは物理的視点でしかないが。
 ――――この、奇妙に『吸い取られていく』感覚は、なんなのだ?
(ES11、行くぞ)
「あ―――了解」
 変形した《ハンブラビ》がスラスターを焚く。スラスターを点火させたみさきは、己の機体の装甲の継ぎ目から血のように赤い燐光がうっすらと滲んでいることに気が付かなかった。
 ※
 劈くような接近警報。舌打ちしたクセノフォンはオールビューモニターの中で一気に巨大さを増していく《リゲルグ》目掛けて《FAZZ》の左腕を突き出した。前腕部の装甲がせり上がり、内部に装填される4発の対宙迎撃ミサイルを撃ち放つ。
 近接信管の作動と共に膨れ上がる爆炎をものともせずに躱した《リゲルグ》が左腕に保持したビームサーベルを発振させる。そのまま近接領域まで肉迫し、その刃が《FAZZ》目掛けて振るわれる寸前、ぎょっと身動ぎした《リゲルグ》の単眼が左を向く。
 レーダーに映る蒼いブリップ。機種を読み取るまでもなく、左上方から迸った光軸が《リゲルグ》と《FAZZ》の間を掠め、高出力のメガ粒子砲の砲火が濃緑色の《ズサ》の胴体に吸い込まれ、背中のブースターユニットにたんまり入った推進剤ごと絶叫のような爆光を押し広げた。
(05、06は一度艦に戻れ! 《FAZZ》はもうほとんど武装がないだろう、それに―――!)
 立ち上がったウィンドウから聞こえたフェニクスの声とともにウェイブライダーに変形したままの《ゼータプラス》が最後の《ズサ》に猪突する。ミサイルの弾幕を5門のビーム砲の斉射で叩き落とし、接触際に瞬時に可変した灰色の《ゼータプラス》は左手でビームサーベルを抜刀しながら横ロールの挙動を取らせ、掬い上げるようにして振るった青白い刃がサーベルを抜刀しかけた《ズサ》を一刀のもとに縦に両断。さらに瞬時に変形した《ゼータプラス》が弧を描くような機動とともに《リゲルグ》へと吶喊していく。
(貴様らが勝手に死なれては私が困るんでな!)
「しかし隊長1人では!」
(エレアが来ている。サイコ・インテグラルの実証のために!)
 暴力的な負荷Gにさらされながら、苦いフェニクスの声が耳朶を打つ。変形した《ゼータプラス》がビームランチャーの光軸を迸らせ、左腕にビームサーベルを発振させて《リゲルグ》と鍔ぜり合う―――。
 クセノフォンは息をのどに詰まらせた。
 サイコ・インテグラル―――恐る恐る背後に視線をやったクセノフォンは、昏い宇宙の中で茫洋と淀む蒼い光を見た。
 ※
 閃光が走る。
 冥い宇宙を亜光速で迸った青白い閃光が機体を擦過し、《リゲルグ》の脚部
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