51話
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索莫と頭の中で響く。ここから先には行かさないと語ったその言葉を信頼し、背を向けていったあの機体の姿が網膜にちらつく。
偉そうに任務だとか語って、この様では格好がつかない。
臓腑からこみ上げてくる激情と恐れ。口の中に溜まったぬるぬるした液を飲み込む。
「ムカつくんだよお前ら―――ゲルググなんて使いやがって」
機体のステータスに視線を流す。不幸中の幸いか、岩塊にバックパックを叩き付けられた割には、《ハイザック》のスラスターは生きていた。案外、悪い機体じゃない。MS-06の設計思想を継承している、ってことか。今すぐにでも帰還しなければならないほどの致命傷を受けながらも、主の命令に従順に振る舞うその誠実さを今更に感謝し、ちょっとだけ申し訳なさを感じながら、歯を食いしばってスロットルを全開にする。
「お前らなんかに―――!」
スラスターの光を爆発させ、ブースターユニットを背負ったその背中目掛けてビームライフルの銃口を向ける。
「―――好き勝手にさせておくかぁ!」
《ハイザック》がトリガーに指を重ねる。そうしてその黒々した銃口が狂ったように雄叫びを上げ、数千度の光の銃弾が《リゲルグ》を撃ちぬき―――。
聴神経に雷が奔った。劈くような何かの音が頭蓋を揺らし、彼女は酷く冷静に、1秒後には事態を把握した。機体の損傷、人間でいう所の腹部に致命的な損傷。オールビューモニターのすぐ下で、ビームサーベルが《ハイザック》の胴体を貫いていた。
もう一機の《リゲルグ》がビームライフルの銃口付近に装備したバヨネットを発振させ、《ハイザック》を串刺しにしたのだ。
モニター越しに背後に視線をやる。モノアイを妖しく輝かせる《ゲルググ》の顔が網膜に焼き付き、琳霞はせき込みながら血を吐き出した。口から飛び出した血がバイザーにべっとりと張り付き、琳霞の視界を赤単色に染め上げていく。
バヨネットの牙を突き刺したまま、アサルトライフルはその黒々とした口から狂ったように咆哮を上げ、ぎらつく純白の閃光がコクピットに群れを成して殺到した。
数千度に達する光は、人間を蒸発させることなど容易いことだ。
耐熱限界を超え、ノーマルスーツが一瞬で焼け焦げる。
家族の顔。
フェニクスの顔。
―――男の顔。
別に好きでもなんでもない男の顔。どこかぎこちなく、それでも精一杯に笑みを浮かべた男の、顔。
―――ちくしょ……。
目元から溢れた液体は、じゅっ、という音と共に、彼女の存在ごと原初的存在へと還元された。
※
脳みそが破裂した。
不意に起こったその冷たい灼熱の不快感に意識が流され、脳髄のどこかに激痛を感じたクレイは、視界に入ったディスプレイの情報を数学的情報の羅列としか理解できなかった。
遥か後方―――レーダーに映ったブリップがまるで最初
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