51話
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閃光が伸び、倦んだ太陽が爆散する。
タイホウがただの一撃の砲撃で轟沈したという報告は、反対側のE戦域にもレーザー通信を介して即座に伝わった。
艦艇が沈んだ。格納庫が誘爆し、即座に沈んだ―――数千人の人間が、たった一瞬に宇宙の塵と同じ了解の存在と化したのだ。
全身の神経が痙攣した。人が大量に死んだ。人がいっぱい、死んだ―――。
脳髄のどこかを流れる血脈が勢いよく破裂し、神経に過電流が流れてのたうち回る。胃をせり上がった嘔吐感そのままに、慌ててヘルメットの右側についているバイザーのスイッチを押し込み、バイザーが音も無く開くのと同時に虚空目掛けて勢いよく胃液をぶちまけた。
頭がずきずきした。榴弾でも食らった頭蓋骨の内側が剥離し、その破片がぷにぷにの脳みそを無残に目茶目茶にしてしまったようだ―――。
(タイホウがやられた!? どうして!?)
(《ドーベン・ウルフ》―――!?)
ローカルで行われた無線通信の声も、どこか遠くで聞こえているようだった。硝子が砕けたような音が殷々と蝸牛を揺さぶり、気が遠くなっていく―――。
(こちらビーク02、ゲシュペンスト、オーダー聞こえているか!?)
(こちらゲシュペンスト、どうした!)
(敵襲だ、試験部隊は―――)
ぷつりとミノフスキー粒子の干渉を受けた無線が切れた。それと同時に、遥か遠方に派手な爆光が広がった。
幻などではない。
クレイは確かに、そのCGで補正された黒の世界に浮かんだ球状の炎の中に、単眼を宿した悪鬼がこちらを睨みつけたのを確かに見た。
実際の相対距離はほとんど数十キロ先である。だが、秒速数キロで物体が移動する永久の闇の世界では、その隔たりはほとんど目の前でしかなかった。
異形の機影が爆発的な閃光を迸らせる。相対距離をあっという間に縮める勢いで急激に肉迫する機影に、たじろぐ暇は無かった。
《FAZZ》がバックパックのミサイルポッドのハッチを展開。無数のミサイルをばら撒き、光の尾を引いたミサイルがピラニアさながらに宇宙を泳ぎ、敵機に殺到する。一発一発がMSを葬るのに余りあるミサイル群の数は10を上回る。ミサイルが敵機に接近するや近接信管が作動、連鎖的に無数の爆光が膨れ上がる。
常闇に咲く大輪の花火。一見して綺麗とさえ見える光景だったが、あくまでそれは風情を伴った場合だ。眼前で膨れ上がった花々は、どれもが敵の殺傷だけを意思する禍々しく大仰な葬華だった。
しかし、クレイ・ハイデガーは、確実に敵を屠ったであろうその光景に寒気を覚えた。
あれは、この程度では死なない。視神経が痙攣し、脳内に写し出したあの幻影―――。
クレイのその予感を嗤うように、けたましく接近警報の音が耳朶を打つ。《ガンダムMk-V》のセンサーが捉える。
機体がいち早く自機
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