50話
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甘ったるいドロドロしたグリーンティーのパックの口を咥えた時に、エレアは不意に惹起した鮫肌の感覚に息を飲んだ。その言葉をより正確に表現する言葉を探し、ほかの言葉ではその漠然としながらも明確な志向性を持った持続を分節化しすぎることを理解した。
行かなければ。鮮やかすぎる輪郭を描いた理性の一撃に突き動かされるようにして、彼女は計器に手を伸ばした。
「整備兵、退避して!」
外部スピーカーに音声を出力させ、エレアは無線にそれだけ言うと首のアタッチメントに繋げたままのヘルメットに手を回して被り、右耳のあたりのスイッチを押してバイザーを降ろした。
(退避しろってどういうんです!? まさかエイジャックスまでタイホウみたいに―――)
「いいから早く!」
がなり立てるように怒声を浴びせ、目を白黒させた整備兵が慌てて遠くへ飛びのいていく。
コクピットの前にかかるキャットウォークを機体の前面からずらす時間すら惜しかった。《ゼータプラス》の右主腕で通路を掴み、無理やり捩じるようにして破壊した。空気のない格納庫内では、その破壊の音はしなかったであろう。
(フランドール中尉―――エレア! 何があった!?)
ディスプレイに立ち上がったウィンドウの向こうで、フェニクスは表情を険嵯に尖らせた。
「早くいかないと―――消えちゃう! いなくなっちゃう!」
何か言いかけ、押し黙ったフェニクスが顔を歪める。
エレアはそれを気にも留めず、《ゼータプラス》の歩を進めた。
ボウワ社製のビームライフルとビームマシンガンを内蔵した兵装ユニットを《ゼータプラス》に保持させる。
(―――整備兵! 私も出る、退避しろ! アヤネ! カタパルトデッキのオペレーションを!)
(りょ、了解!)
隣のガントリーに固定されていた《ゼータプラス》も起動。大型のビームランチャーを携えたところで、フェニクスの通信ウィンドウが開いた。
(貴様が破壊した設備については後でこってり絞ってやる―――いいな!)
頷く。
操縦桿を握りしめ、自動操縦でリニアカタパルトに脚部を接続した漆黒の《ゼータプラス》が膝を曲げる。
カタパルトデッキに身を晒す。
視界一杯に広がる黒い―――蒼い宇宙。
(ゲシュペンスト02、出撃してください!)
「02、《ゼータプラス》出ます!」
スロットルを全開に、爆発的な閃光を背負った《ゼータプラス》が蒼い海へと弾き出されていく。負荷Gも気にせず、決然と紅い瞳を永久に突き刺したエレアは、ただ小さくその唇を動かした。
私が、守るから―――。
黒の《ゼータプラス》は閃光の翼をはためかせ、夢幻なる無限の世界へと飛翔した。
※
(機種特定、《ザクV》と―――《ドーベン・ウルフ》です!)
振り返り、
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