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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
48話
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)のトリガーにあたるボタンに指をかける。
 デブリが舞う宇宙空間。《ハイザック》2機が放った火箭を躱し、無防備を晒した《ジム・スナイパーカスタム》の木偶のような姿にロックオンし、その胸部目掛けてN-B.R.Dの砲撃を見舞った。
 従来のMSが携帯するビームライフルの3割増し、現状最高速度で撃ち放たれたメガ粒子は鮮やかに藍色の《ジム・スナイパーカスタム》のコクピットの装甲を貫き、パイロットを原子レベルのミックスジュースへと返還させた。
(2機目撃墜―――順調ね)
 護衛についている琳霞の《ハイザック》が隣に並ぶ。全面に広がった視界の向こうで、白い色の《ハイザック》の単眼がクレイそれ自体を射抜くように覗き込む。
 曖昧に返事をしながら、クレイは自分の心臓の拍動がどんどん早くなっているのを感じた。内側から身体を打ち鳴らし、生じた衝撃が蝸牛の内のリンパ液を揺らし、耳小骨をぐらぐらと痙攣させ、最後に鼓膜を震わせているようだ。そのままごろごろと胃の中に心臓が転がり、食道を這いあがって口から吐き出してしまいそうだった。
 緊張している。確かにそうだ。
 身体が震える。それは事実だ。
 だが―――クレイはクセノフォンの指示に耳を傾けながら、自身の身体(しんたい)の違和感をまざまざと感じ取っていた。
 緊張している。確かにそうだ。
 身体が震える。それは事実だ。
 ―――お腹が空いた。そんな場違いな気分が大脳古皮質からふつふつと湧き上がる。
 クレイは、股間に感じる奇妙な不快感を感じていた。
 失禁―――ではない。もっと身近に感じた、もっと生々しくドロドロした白濁色の感覚。
 N-B.R.Dのトリガーを引き、銃口から光軸が迸る。圧倒的な速度で飛来する灼熱の光が正確にMSの胴体を溶解させ、パイロットが、ヒトが、人間が、存在が、あっけなく死ぬ。その死をリアルにまざまざと感じた瞬間に背筋を舐める神涜行為への背徳、そして背徳に伴う壮絶な―――快楽。犯してはならぬことをしてしまったことへの、目も眩むような悦楽。
 クレイは愕然とした。
 自分は、射精していたのだ。実戦に、戦闘に、人殺しに欲情していたのだ。
 身体(しんたい)が痙攣した。それが快楽故なのか、それとも自己への憎悪からなのかはクレイの身体(しんたい)は理解できなかった。
 自分は生きているということへの底抜けの安堵感。
 人を殺すことの、永遠に射精し続けるかのような望外の悦楽。
 吐き気がした。吐いてしまえば楽だったが、戦闘前に胃に物を詰めるような馬鹿ではなかった。馬鹿だったら、良かった―――。
(08、大丈夫?)
 隣に並ぶようにしたジゼルの《ガンダムMk-V》が腕を伸ばし、クレイの《ガンダムMk-V》の右腕に触れる。
 わざわざ、ジゼルは接触回線を行っているのだ。ローカルデー
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