45話
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を言うことは、神的な何かを無法に踏み荒らすことと同義であるように思われた。そうですか、とアヤネは言ったきり、押し黙ってしまった。
「大尉はフランドール中尉を実戦に参加させるおつもりで?」
研究員は、酷く事務的な言い方で言った。アヤネは不愉快そうに男の方を見た―――が、フェニクスはやはり表情を変えなかった。
いかにも学のあるエリート学者。そんな風貌の眼鏡の男は、だからと言って冷血で人を純物理的物質によって構成される機械と変わらないものとしか見ない、人間非ざる者というわけではない。家に帰れば妻と娘を持つ人間である。ただ、彼は私的人間であるのと同じ存在論レベルで社会的人間なのである。だから、フェニクスは今更に男のその科学者の眼差しに嫌悪感を覚えることもしなかった。
「財団の方々はデータが欲しい。予備はあまりにも不安定で実用段階ではない。中尉は生得的強化によりインテグレイションに耐えられる―――投入しない理由があるとしたら、試験小隊故に戦闘する相手の技量でしょう?」
男は―――表情を変えなかった。男もまた、フェニクスの心情を察していた。
「相手は高々ジオンの残党で、連邦軍は大規模な軍隊を使用するつもりです―――財団もそこまで早急にデータを欲しがっているわけではありません。慎重を期すべき、と私は判断します。《リゼル》の護衛以上には戦闘には参加させません」
「同意見です。フランドール中尉は貴重な被検体ですからね、不用意に喪失のリスクを負うべきではありません。予備体は中尉に比べれば未完成ですから―――」
男はまるで赤子のように言葉を並べ続ける。
フェニクスはただ彫刻のような表情のまま、研究員の説明を聞き続けていた。
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