45話
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て持続しなかった。猜疑を維持するほど、エレアの思案は分化していなかった。
時間が澱のように沈殿し、身体感覚が混沌としている。それ自体は慣れた感覚だった―――が、エレアは奇妙な違和感を覚え続けた。
あなたは、だぁれ―――?
「サイコ・インテグラルシステム終了。モードインテグレイションからモードダイバージェンスへ移行―――分化措置、完了しました。フランドール中尉の意識レベル正常値で安定」
アヤネの報告に頷いたフェニクスは、腕組みしたまま眼前のマシーンに目をやった。
小型MS、RH-90《グリペン》をベースに、目的に従い腕部が切除され、代わりに背後やら脇からや夥しいほどの―――蟲が群がっているとすら見えるほどにケーブルが接合されたユニットは、薄暗いフロアの真ん中に物々しく鎮座していた。RH-35E《ドラケンE》のコクピットが強化ガラスで覆われていたのに対し、《グリペン》のレイアウトは大きく異なる。全面を装甲で覆われ、全天周囲モニターと同じ原理で内側に映像を投影するという機構になっている。その故に、外側から見る限り内側を窺い知ることはできなかった。
微かに不安がよぎる。もう何度も経験しているからと言って、危険な実験であることに変わりはない。身体感覚及び時間感覚の積分を誘発するためのある種の薬物投与と暗示、そして感覚の統合から急激に分化へと移行する際の反動は、生得的に強化された人間でなければほとんど耐えられるものでは―――。
「やはりダメですね。構築現象―――ヴァルキュリアの発現は観測されてもほとんどミリ秒単位でしか持続しません。これ以上の試験はあまり実りのあるものとはならないかと」
オーガスタ研の研究者は顔色暗く言った。そうですか、と応えるフェニクスの声は素っ気ない―――ゆっくりと開いていくハッチにほとんど注意を向けていたからだったが、非難されたと思った男は困惑気味にたじろいだ。
「以前も説明しましたが、元々サイコ・インテグレイションの技術母体はオーガスタのものではなくチャクラ研で研究開発されたものです。その上にチャクラ研究所自体が崩壊してしまっており―――」
フェニクスはそこで手を上げた。うんざりするほど聞いた説明をわざわざ聞くまでもない。フェニクスにとっても、男にとっても益のないことである。男は複雑な表情を浮かべたが、ほっとしたように溜息を吐いていた。
「寄っても?」
「ええ、大丈夫です。ただあまり強度の刺激は控えるようにしてください」
この会話も何十回と繰り返したルーティーンだったが、一度なりとも欠かしたことのない行為だった。わかりました、と研究者には目もくれずに言いながら、フェニクスは歩みを進めた。
ゆっくりと―――実際は早歩きで―――《グリペン》を改修したユニットに近づいた。
何人もの技術者がユニットの
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