44話
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選んだ人間だったから。自由にのびのびと思考できるほど、クレイの回路は柔軟には出来ていなかった。
琳霞の姿が、一瞬網膜を掠めた。
ぽすんと空気の音を立て、みさきがベッドに腰掛ける。
「そういえば、どうして入れたんですか? というかなんで俺の部屋に―――」
「どうしてって、ハイデガー君元々ロックしてなかったよ?」
「―――え、マジ?」
「マジマジ。おっちょこちょいなんだから」
からからとみさきが笑う。記憶を辿ったが、よく覚えていなかった。
「ちょっと前に街で見かけてさ、ハイデガー君ここに配属だったんだなーと思ったら会いたくなっちゃって。ホントはもっと前に会おうかなって思ってたんだけど、君サイド3に行ってたからさ―――あ、そうそう! エレア、ってあの時手繋いでた子? 彼女なの?」
クレイも椅子に座ったところで、みさきがぐいと身を乗り出した。
街で見かけた―――手を繋いで―――すぐに心当たりが見つかった。初めて、人生でまともに『デート』なるものを体験した時だ。その後は何かと忙しくて、基地内でしか彼女とは会う暇がなかった。「まぁ、そうなるかな」と照れたような、複雑な笑みを返すと、みさきは満足そうにうなずいた。
「彼女出来たんだ、良かったね!」
「えぇ、ようやく初めて…」
「あれ、そうなの?」
みさきが驚いたように目を丸くした。そして、事態を理解したらしいみさきはははぁと納得したようにこくこくと頷いた。
「一目惚れして即告るって、そりゃ彼女も出来ないですよね…大して顔も良くないし」
「いきなり好きって言われた時はビックリしたよ。ほとんど喋ったこともなかったのにさ―――」
かつてを思い出したようにみさきは笑った。
深刻な事態というのも、過ぎてみれば笑い話になる―――そういう、ものなのだろう。クレイも表情筋をなんとか動かし、苦い笑みを返した。
みさきは変わらない。親しみ深くて、分け隔てのない人だ。それをみさきは自分のことが好きなのだろうかと錯覚して、自爆したというわけだ―――思い出してみれば、確かに間抜けな笑い話だ。
息を吐いた時、クレイは愕然とした。
息が少し苦しかった―――心臓が奇妙に拍動し、肺を圧迫しているようだ。
みさきはすっかり成熟した女の肉体に、日本人らしい幼げな顔立ちで、クレイは確かに眼前の質料的存在者に欲情を抱いた。勃起しそうなのを隠すために足を組むようにした。
「今の彼女も同じパティーン?」
「まぁ今回も同じ…というか、今回は相手から逆パターンというか…」
「似た者同士かよ。銀髪で不思議そうな見た目だったもんね。大人しそうなのにガーターなんだぁとか思ったケド」
乾いた笑声を出した。あのミニスカにニーソとガーターという組み合わせは、後後やはり攸人の指図だったことが判明して
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