43話
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気持ちのいい音を奏でるのを知っているのだ。
そうだ、とベッドから起き上がり、エイリィがハンドバッグから全高20cmほどの黒い塊を取り出す。それもまた、熊のぬいぐるみだった。
「これあげる」
「これは?」差し出されたぬいぐるみを手に取った。
「妹の形見かな? 弾除けのお守りだとでも思って」
「ダメだよ! そんなの貰えない」
「いいからいいから。もう新しいの買っちゃったしー」
それに―――言いながら、エイリィはベッドに腰掛けた。
「一人だけご利益に預かるよりも、多い方がいいじゃない?」
それは、単純な合理的計算的思考の産物ではないか。こういう大事な物は、そういうキッチュな視点で見ていいのだろうか―――。
混乱しながら熊を見る。プラスチックのつやつやした瞳が僅かな光を受けて無垢に照り返った。
プルートもエイリィの隣に腰を下ろした。ごわごわでスプリングが壊れたベッドの感触は、プルートの部屋と同じくらい最悪だが―――別に、どうでもいいことだと思った。
「じゃあ、貰う」
ベッドの側の棚にぬいぐるみを腰かけさせる。おう、と肯いた26歳の金髪の女は、16歳の栗色の髪の少女に身体を寄せた。
「プルのことはちゃんと守ってあげるからね―――」
蜂蜜が耳の穴にとろけていく。その呼び方は、プルートをプルート足らしめる呼び方だった。エイリィは与り知らぬことだが、甘えるような温かい声でそう呼んでくれるのは好きだった。
エイリィの手がプルートの長いもみあげを持ち上げ、艶めかしい動作で撫でる。プルートの薄い胸に触れ、固くなり始めたそこをエイリィが甘噛みする―――。
そうしてそのまま、ゆっくりと存在の境界線を薄めていった。
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