42話
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備ではビーム兵器の恒常的な維持整備は出来ませんでしたから……」
大げさな身振りで否定し、人の良さそうな笑みを浮かべる男は、それに、と灰色の緑色に塗装されたマクスウェルの《リゲルグ》に目をやった。
「元KSK所属の貴官が《リゲルグ》を使用しているほどなのですから、ネオ・ジオンも事情は辛いのでしょう。MSを供与していただくだけで十分有難いことです」
マクスウェルも苦笑いした。《リゲルグ》の性能は近代化改修を施されたとはいえ、カタログ上のスペックは《ガザC》とほぼ同じだ。骨董品のようなMSが立ち並ぶ中、最新鋭の第4世代MS《ドーベン・ウルフ》が聳える様は、却って気まずそうともいえた。
「『あれ』がまともに稼働すれば良いのですがね……何分我々ではまともに起動させることすら出来ませんでした。駆動系にサイコミュ関連の技術が用いられているというのがどうにも厄介で」
「アナハイムもそこがネックだったのでしょう―――今となっては高価なガラクタですか」
男が笑う。「見ますか?」と、厳つい見た目の割に親しみ深さを感じさせる笑みに、マクスウェルも笑みを返した。宙賊などという荒くれを率いているのだ、人を惹きつけるものがあるということなのだろう。それなりに体躯の大きなマクスウェルよりもなおもって体格の大きな男が丁寧な言葉づかいをしていることに違和感を覚えたものだ。
「ではこちらへ」
左手を背後に示し、マクスウェルを導くようにした男が先を行く。格納庫のブロックの出、仮設の司令部のボロな建物の門をくぐる。そのまま地下へ、コロニーの層構造へと降りていく。元々は高度なセキュリティ・クリアランスを備えていたのだろう。破壊された隔壁を通るたびに20桁ものパスワードとそのほか何種類かの生体認証を要求するモジュールがあるのを目にしていると、目的の場所へと着いた。
ふきっさらしの格納庫は、地表よりもさらに酸素濃度が薄いように感じた。碌に整備を受けていないのだろう、格納庫自体もところどころ崩壊し、MSの整備を行うこともできないほどになっていた。あまりにも寂れ、嫌に広々とした格納庫は、MSパイロットとしてはなんだか奇妙な感覚だが―――。
男が地を蹴る。マクスウェルも頑強そうな男の背を追った。
マクスウェルの目がある場所に留まる。
数少ない無傷のブロックのうちの1つに、朽ちるようにして斃れたMSが、あった。
頭部ユニットがはしゃぐしゃにひしゃげ、四肢の一部は欠損している。堅牢だったはずのガンダリウム合金は無残に捲れ、見るに耐えないものだった。確かにあそこまで大破していては、簡易的なMS開発の拠点でもあったとはいえ、茨の園では修復は不可能だろう。
あれが、完璧な形で残っていたなら―――《スタイン》すら上回る機体足り得ただろうに。思案が掠めたが、栓のないことだった。
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