41話
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「さっきも話したがやんちゃな娘でしょう? 大尉は苦労するかもしれないけれどしっかり守ってあげてください」
「いえいえ守ってもらうのは私の方ですよ。扶桑少尉は中佐の秘蔵っ子として相応しい実力をお持ちです」
「あ! また私のこと馬鹿にしてたんですね、中佐は!」
ぷー、と頬を膨らませる。少しだけ、オリェークが笑みを見せた。
「だって事実でしょう?」
「むー、そんなこと言ってると息子さんのこともう教えてあげませんよ?」
「あら、それは困るわね…」
ほとんど困ったような顔などはせず、上品そうにプラチナブロンドの髪を揺らして首をころんと首を傾げて見せた。実際、わざわざみさきを介する必要などなくとも、ベアトリーセは息子のことを調べられるだろう。それでも、みさきから見た彼の母親の姿を求められるというのは、どこか自分がベアトリーセに頼られているようで嬉しかった。
「ジュガーノフ大尉、少しいいですか!」
上から降ってきた声に3人で顔を上げると、《ハンブラビ》のコクピットから上半身だけ身を乗り出した整備士が18m先で手を振っていた。女性の整備士に応じたオリェークは、「それでは」と額に手を構えた。
「ええ、それじゃ」
「また後で」
みさきとベアトリーセも敬礼を返す。踵を返したオリェークが地を蹴り、無重力を泳いでいった。
※
「我々が護衛―――ですか」
大隊長が肯く。
琳霞はやや気抜けする感触を味わいながらも、表情に間の抜けた雰囲気を漂わせるほどに新人ではなかった。
「正確には、諸君ら第1大隊第2小隊は666試験部隊の第2小隊、サナリィ主導の新型ビーム砲の性能評価試験の護衛、ということか」
琳霞は、シャルンホルストに備え付けられた執務室のマホガニーのデスクに慎ましやかに座る大隊長の顔をまじまじと見た。
細面のこけた顔に薄くなった頭は、いかにも薄幸そうで―――だが、琳霞が見ていたのは大隊長のディティールなどではなく、重さをもってその背後に実在した言論だった。
666試験部隊―――1人の男の顔が思い浮かんだ。
その、護衛―――?
「なんだ不満か?」
細い身なりの割に柔らかい視線の男が琳霞の視線を見返す。
「いえ、そういうわけでは―――」
慌てて居住まいを正すと、大隊長はその壮年に似合わない無邪気な笑みを浮かべた。ちょっと不気味で、親しみ深かい笑みだ。
「我々が試験部隊の護衛をしなければならんことは理解しているな?」
琳霞は、一度頷いた。
国防軍が地球連邦軍の主導する作戦に参加するのは、一種の誠意の表明だ。だが、一方で国防軍の正面装備である《ハイザック》の性能は、現在の地球連邦宇宙軍の主力機《ジムV》の後期生産モデルと《ジェガン》には遠く及ばない―――つまり、いざ連携を
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