39話
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まらせながら鼾を続けていた。
苦笑いを浮かべた。どこかキツイ眼差しの彼女が油断している様が可笑しかった。
と、思っていたのも数分のことだった。もう、夜中なのである。ここでぐっすり眠っていては風邪をひいてしまう―――。
「俺が運ぶんだよな」
独り言ちる。が、もちろんそれが嫌で言ったわけでは、無かった。人の役に立つ、というのは良いことである。クレイは、子どものような素朴な良心を惹起させ、ゆっくりと立ち上がった。
暗闇で琳霞を見下ろす。すっかり熟睡して、何をされても起きなさそうなほどだ。
―――このままジャケットとシャツを剥がせてパンツと下着を脱がせ、滅茶苦茶にレイプしても起きなさそうで―――。
咽喉を鳴らした。
何を考えているのだ―――むしゃくしゃに頭を?いて、不意に大脳のずっと奥まったところから染み出してきた考えを汲みだして唾液としてそこらへんに吐き出した。
「どうやって運べばいいんだろうな?」
わざと声に出した。
数十秒ほど思案した後、クレイは琳霞の肩甲骨のあたりと膝裏に腕を入れ、そのまま抱きかかえた。
すうすうと顔の近くで響く彼女の寝息。
さっきのは、一時の気の迷い。気の、迷いなのだ―――。
苦い気分を一部も表情に出さず、クレイは国防軍の仮宿舎までの道のりを必死に頭のどこかから呼び出した。
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