39話
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ようなそんな絶対な知見などではなく、もっと身近なものなはずなのだ―――。
「すっごく寒くてね。雪が降って喜んでたわよ―――ズムシティで雪が降ったのなんて初めてだったんだから。でもそれは最初だけ。もうどんどん寒くなっちゃって痛いくらいだったし、ガッコーの先生はシェルターに入れって煩かったからさ。シェルターに入る前に見上げた空は綺麗だった。雪に空の光がキラキラ写っててね」
寝そべった彼女は、アルコールが身体中に回るようにぼんやりと声を紡いでいた。掲げられた彼女の手が、どこかを彷徨っていた。何かを掴もうとして、ふらふらと虚空を漂っては当ても無く空を掴んでいた。
「あの人もね、インタビューで言ってたのよ。雪が降りしきる中に映る街の光を見上げたって。嬉しかった。私はあの人と同じものを見たんだって―――」
「あの人?」無粋と感じながらも、クレイは声を挟んだ。
彼女は、ゆっくりとクレイの方を見やった。
「憧れだった。あのクソッタレみたいなテロリストどもに制裁を加えるあの人が希望だった。私も、あんな風になれたらってずっと思ってた」
熱のこもり始めていた彼女の言葉は、結局存在者が不在だった―――けれど、その言葉でクレイは彼女の指し示す存在者が何者なのかは自然と知れた。
―――琳霞の黒髪の毛の根本は、既に地毛の色が覗いていた。髪を縛る金色のリボンが風に身を任せてそよそよと優雅なダンスを踊っていた。
ジオン共和国出身でありながら、アースノイド至上主義者の集団たるエリート部隊ティターンズへと参加したパイロット。組織の肥大化と共に腐敗し始めたグリプス戦役時のティターンズはともかく、結成当初のティターンズは真のエリート部隊という評価こそが相応しい部隊だったことは、第一次ネオ・ジオン抗争終了後の、異常とも思える元ティターンズを弾圧する風潮の中で無視されてきた事実だ。地球連邦軍屈指のエース部隊『不死身の第四小隊』の面々は語るまでも無いだろう。かつてRX-78-5《ガンダム5号機》のテストパイロットを務めたフォルド・ロムフェローや、戦車戦のエースでもあり、RX-78-6《マドロック》のテストパイロットを務めたエイガ―。一年戦争を駆け抜けた綺羅星の如き錚々たるエースたちが名を連ね、戦後の秩序を乱す『ジオンの残党』を鎮圧するティターンズは、ジオン残党が諍いを起こすたびに、無実の罪を擦り付けられてきたジオン共和国の市民たちにとっては尊敬の念でもって迎えられた―――という側面は忘れ去られている。そして、そんな尊敬されうる部隊に選出されたフェニクスは、まさに尊敬それ自体だったに違いない。もちろん、当時のティターンズが将来的に30バンチ事件のような許しがたい惨事を引き起こすことになろうとは、知る由も無いことである。
15年前の一年戦争、多感な時代をおくった琳霞は謂れのな
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