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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
39話
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る。
「ったくあいつマゾか何か? 今日一日中あたしたちと8時間以上は実機で訓練してたじゃない」
 フライドポテトを鷲掴みにしてむしゃむしゃ食べ始めた琳霞がなお顔を険しくする。
「あいつは趣味ですから。何かやってないと気が済まないんですよ―――中尉、もう一杯」
 ヴィルケイが琳霞のグラスに再び並々とビールを注ぐ。彼女は多少もたじろぐことなく、再びアルコールの塊をぺろりと胃に納めた。
「クレイに会いたいのなら部屋か基地の裏手の丘にいますよ」
「丘?」
 ぷはー、と不味いと言っていたにしては心地よく味わった琳霞が聞き返す。
「ええ、あいつそこだと静かで考え事が出来るって言ってましたから」
 肯定しながら適当に何か口に放り込んだ攸人は、あっち、と指さした。もちろん単に歓楽街から基地の方角を指さしただけに過ぎないのだが、何故か得心したように琳霞は立ち上がり、そのまま店の外へと出ていく―――前に。
 店の出口付近で踵を返した琳霞はそのまま席に戻ると、腰に巻いたジャケットに覆われた尻のポケットから黒い革の長財布を取り出して、勢いよくテーブルの上に叩き付けた。
「今日はあたしの奢り。これで好きなだけ飲みなさいな」
 それだけ言い残して、琳霞は再び出口に向かった。背後で歓声が上がるのをなんともなしに聞きながら、金色のリボンをたなびかせた琳霞は外に出る。街路に何台か並んだタクシー会社のエレカに乗り込む―――財布が無くてもタクシーに乗れるのはやはり便利だな、とサイド3との事情の違いを感じながら、琳霞はジオニックトヨタ社製の座り心地の良いエレカの運転手に行先を告げた。
                    ※
 鼻先をそよ風が過ぎていく。夜の密やかな静謐を孕んだ悪戯な風が頬を擽り、目を覚ました――そんな優雅な目覚めは、クレイには残念ながら訪れなかった。思案の途中でうとうととし始めたころ、どこか遠くの方でがなり声のするのをなんともなしに聞きつけた時、クレイはさして気に留めなかった。それだけクレイは疲労が溜まっていたし、そもそも睡眠に片足を突っ込んでいたクレイはそれが自分を呼ぶ声だと気づいても音としか聞いていなかったのである。その声が次第に近づいてくるのにも、さして注意を払わなかった。
 ほとんど眠りに使ったクレイの目を覚まさせたのは、側頭部への鋭い痛みだった。うんうん唸りながらおぼろげな視線を周囲に漂わせていると、もう一撃こめかみを痛撃が襲った。
「ほらほら早く起きなさいよ」
 さらにもう一撃、不機嫌そうにぶつぶつ言いながら放たれた琳霞の軍靴による蹴りは、再びクレイのこめかみあたりを打ち据えた。
 痛みのせいで強制的に叩き起こされると、顔を真っ赤にした琳霞は、不機嫌そうに顔を顰めたクレイなどお構いなしに隣にどっかりと座った。酷く酒臭い―――相当酔
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