35話
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の足音とヘルメットの下に灯っていた瞳を見たからだった。
「ハイデガー少尉でしょうか」
その唐突な声色は、2人いる内のもう1人の男の声だった。
「私はジオン共和国国防軍の者です。貴官の部隊の隊長から要請がありませて、救助にきました」
柔和な笑みとともに敬礼する。
救助―――ほっと胸を撫で下ろしながら、クレイも立ち上がって名前と階級を言いながら敬礼した。
「まさかコロニーの中で遭難することがあるとは思いませんでしたよ」
そうでしょうね、ともう一人の男が快活な笑みを浮かべる。救助の際には柔らかな態度で要救助者を安堵させることが大切だと言うが、なるほど本当のようだ。少なからず、クレイは一気に疲労と脱力が押し寄せるのを感じた。
「ヘビに噛まれるなんて災難でしたね。毒がなくて何よりでした」
人当たりの良さそうな笑みを浮かべる。
「全くですよ―――救助だって」
締まりのない笑みを浮かべながら、背後を振り返る。まだ眠たげにくうくう寝息を立てるエレアに、エルシーはもうすっかり目を覚まして―――。
「―――お前たちは何だ?」
重たい声が耳朶を打った。
視線の先にいたエルシーの顔に、クレイは思わず身を竦ませた。鋭く切れ上がった碧い瞳には警戒が―――否、明らかな敵意、威嚇とすら思えるほどの苛烈さに満ち満ちていた。
「もう一度聞くぞ、お前たちは何者だ?」
どこか快濶な少女といった様子とは明らかに相反するその冷然とした声色に、軍服に身を包んだ男がたじろいだ。ですから私たちはジオン公国の、と慌てたように言葉を漏らした男に対し、エルシーの先鋭化した不快感は露骨なままだ。
明らかにおかしい。エルシーのその態度も、そして怯えたように身を縮めるエレアの様子も、この男2人が単純に救助に来たわけではないということを雄弁に物語っていた。
―――待てよ、クレイは男2人に背を向けながら思案した。何か引っかかる。頭の灰白質に言葉の小骨がつっかえている奇妙な感触。
背後で大気状態が悪化する予定になっている云々を必死に説明している声を虚しく聞きながら、クレイはそのロゴスの破綻を―――。
「ですから早く我々の連絡艇にですね―――」
憤懣を言葉の端々からにじませた小太りの男が口角に泡を出しながら説明する中、ぶつりと脳の皺に突き刺さっていた言論の棘を引き抜いたクレイは、一度唇を舐めた。
「あなた方は随分優秀なようですね」
背の高い方の男が訝しげに顔を顰めた。
「いえ、簡単な話なんですよ」振り返りながら、両腕を後ろに組んだクレイは微笑を浮かべたままにした。「貴方がたは別に医療班というわけではないのでしょう? なのに私のこの左足の太もも裏のこの細かい蛇に噛まれた跡を素早く見つけたわけだ。いや素晴らしい。明かりも碌に出ていないのに大したものです。僕
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