34話
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ころだった。
「ごめんね、エルも」
「いや、あたしは別に、いい」
なんだか気まり悪い。素っ気なく言って、プルートは壁に身体を預けたまま、地面に腰を下ろした。
「いつも、じゃないんだけどね。時々凄い魘されることがあるんだよ。そういう時はいっつも寝ながら抱き付いてくるんだけど―――クレイは全然知らないみたい」
「そう、なんだ」
胸が痛い。クレイに普通に触れているエレアが、クレイのことを語るエレアが、何故か酷く疎ましく感じる。何故、という理由は、プルート・シュティルナーにはよくわからなかったが。
エレアが欠伸をする。弛緩した拍子に目端から雫が零れた。
「エレアは寝てていいよ。次はあたしの番だから」
「うん―――おやすみ」
もう一度、欠伸を一つ。万歳するように両手を上げて伸びをして、なんだか間抜けな奇声を上げると、そのままクレイの胸に寄りかかった。まるで、子どものようだな、と思いながら、プルートはクレイの胸板を枕にするエレアから視線を逸らした。
ぱちぱちと火が爆ぜる。赤と橙の炎が委縮するようにして身動ぎした。
頭の中を空っぽにする。何も考えない方が、気が、楽だな、とプルートは思った。そうしてプルートは炎がまた踊り始める光景を眺めた。
自分の右手の甲に触れる、誰かの手の感触、その感触がプルートの全神経を飲み込んでいく錯覚を覚えながら、プルートは、熱いな、と思った。
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