34話
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―――ハッ!?」
焚火の側、ぽかんとした顔でプルートを眺める銀髪の少女の姿があった。
「いやいやいやいやこれは違うぞ! 何が違うかはよくわからないがとにかく違うんだ! あーそう、事故! 事故なんだ! これは悲しい―――」
てくてくとこちらに向かってくるエレア。
そうだ、クレイはエレアとそういう仲なのだ。にも拘らず目の前でこんな痴態を繰り広げるなど―――。いやいやでも悪いのは自分なのだろうか? 元々行為をし始めたのはクレイであって―――でもクレイはクレイで寝ているし―――。
エレアが地面に膝をつける。そうして両手を伸ばしてクレイの首に腕を回すと、クレイらかく胸に抱き寄せて、愛しむように栗色の頭に頬擦りした。
「大丈夫だよ。大丈夫だから」
―――母親の、ようだった。むずがる赤子をあやす母親のように慈悲深く、けれどどこか初々しさを、自分自身にも不安さを伴った瑞々しい母性の発露。対象、a。
するするとプルートを抱いていた手が脱力していく。意思を持ったかのように蠢いていた手が死んだようにだらけていく様に、プルートは幾許かの切なさを覚えて、そしてすぐにその考えを頭の隅に追いやった。
気を抜けば膝が砕けてしまいそうになりながら、壁に身体を預けて立ち上がる。
自分の手で自分を抱きしめる。
身体が熱い。身体の芯のほうではまだ何かが燃えている。火をくべられる機会も失われてしまった熱源は、行き場を無くして身体の奥でのたうっているようだ。
いつも、彼女を愛しているのはエイリィだった。男に身体を触れられたのは―――男に身体を許していい、と思ったのは、さっきが初めてだった。
唇を結ぶ。未だに身体の中に残った性愛の残余がどうしようもなく鬱陶しくて愛しかった。
横目だけでクレイとエレアを一瞥する。
エレア・フランドール。プルート・シュティルナーの、ネオ・ジオンの―――獲物。
可愛いな、と思う。腰まで届く重金属の銀髪にあどけない顔立ちと背格好。その割に肉付き自体は良い。顔つきもただ可愛らしい、というのでもなく将来的にはきっととんでもない美人になるのだろうな、と思わせる耽美の萌芽を感じさせる。
客観的に見て、プルートは自分の顔が整っていることを知っている。彼女にはよくわからないが、プルート・シュティルナーはそういう風にデザインされていると言うだけの話だ。
自分の身体に目を落とす。デザイン調整のミスのせいで、プルートの身体は他の個体に比べて成長が緩慢だった。本当ならもっと背が高くてバインバインのおねーちゃんになっているらしいが、プルートの身体は小さかったし、女というより少女だった。
「もう、女の子にあんなことしちゃだめでしょ」
脇ではエレアがぷー、と頬を膨らませながら、クレイの口に指を突っ込んでぐいぐい横に引っ張っていると
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