34話
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わざくだらない話に付き合ってくれたのかもしれない―――。
「おやすみなさい、エル」
くーくーと寝息を立てるエルの頭が縦に揺れた。微笑を浮かべながらも、クレイは彼女の顔に手を伸ばし、口から垂れている液体を指で拭った。
予想以上に生暖かくぬるっとした感触にたじろぐ。
指先で白く濁った温い液が焚火の光を受けて異様に照り返った。焚火の側に刺した蛇の肉は、もう、焼けていた。焚火の火が熱いな、と今更に気が付いた。
※
熱いなぁ、と思った。
エルシーは―――プルート・シュティルナーは、頭の先から爪の先まで、身体中の隙間に原油ででも満ちているのではないかと思うほどの倦怠感を覚えながら、自分の身体の熱の心地よさに身を任せていた。
自分の身体が熱いわけではない。熱源は近いが、炎が間近で燃えているような、肌を焼けつくような熱は感じない。もっとふわふわしていて、それでいてじっとりと重さを感じさせる熱の感触。プルート・シュティルナーという個人を包み込むような柔らかさと、少女の身をしっかりと捉える幾許かの束縛感。時々身体のどこかを擽るように触れる何か。
髪の毛を愛しむように触れる感触。長く伸ばしたもみあげを手櫛するように梳いて、そうして毛先まで触れたら髪の束を持ち上げるように。そうしたら、少女の顔の輪郭を、まるで壊れ物を恐れるように、それでもその耽美さに陶酔するように。指の腹に静謐を孕ませて、皮膚の幽かな間歇からじわじわと浸透していくように、触れていく。薬指の先が、プルートの健やかなピンク色の下唇を触る。
唇が耳に触れる。温度を持った吐息が外耳から鼓膜を通り、何かしらの神経を痙攣させた。
知っている。この暖かさ、この存在の境界面を溶かしていき、1つにしようとしながらプルートという少女の熱を際立たせようとする奇妙な闘争の感覚。
そうだ。エイリィの抱かれている時の、感覚だ。未開の地を慎重に探索する探究者のように、じっくりと手を這わせていくあの女の快楽の活用の仕草に、似ている―――。
その安らいの性愛の中、プルートは不意に身体を打った身体快感にぎょっと目を見開いた。
お尻の部分―――競泳用の水着が少し食い込み、スリッドになった部分をまるで蛇がのたうったかのような感触が背骨を擽った、微睡みの中の朧な意識が一気に覚醒し、はっとしたプルートは、先ほどまで自分を包んでいた柔和の感覚の正体をすぐに理解した。
冷たくなった尻を蠱惑的に触れては、プルートの臀部を握るように掴んで、そうしてそろそろと大腿へと向かい、水で冷たくなった柔肌を爪先で擽る。
耳元にかかる温い息。外耳に触れる唇の柔らかな感触。人体で最も硬いエナメル質が耳たぶを愛撫し、首筋を温く濡れた生き物が這っていく―――。
堪えようとして、それでも肉体の緊張をすり抜けた快楽の吐息が漏
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