34話
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れたように口をぽかんと丸く開けていた。呆気にとられながらも、クレイは頬を緩ませた。
「刃物がないとキツイですけど……やってみますよ」
おう、と首を縦に振った栗色の髪の少女が立ち上がると、途中焚火の側に刺してあった何かを手に取る。少し所在ない足取りでクレイの側までてくてく歩いてきて、すぐ隣に腰を下ろした。クレイはエレアを起こさないように彼女の小さな身体を抱え、そっと壁に寄りかからせる。エレアは軽く身を揺すったものの、起きることもなく耳触りの良い密やかな寝息を立てた。ぐっすり安眠しているようだ。
エルシーの手からヘビを受け取る―――エルシーが左手に持つものがふと目に入り、クレイは顔を顰めた。
すっかり乾いた枝に突き刺された丸々太った白い物体は筋張っていた。要するに、何かの幼虫だった。ふーふーと冷ますように息を吹きかけたエルシーは、何度か冷却動作を繰り返した後に、白い肉体の中にぽつんと存在する黒い頭部からかじりついたが、すぐに口から離した。どうやら熱かったらしい。舌を出して眉を寄せたエルシーがクレイの視線に気づくと、照れたように笑みを浮かべた。
「よく食べますね……」
「だって食べ物無いし。クレイも士官学校時代はそういう経験くらいあるでしょ?」
「そりゃ俺は平気ですけど……一般企業の整備士の割には結構図太い神経してますね」
微かにエルシーが狼狽したことを、クレイは露ほども気が付かなかった。というのも、クレイは自分に牙を向いた勇敢な爬虫類を如何に食事用の肉塊にするか、睨めっこしていたのである。結局エルシーもすぐに平静を装って、まぁねと酷く素っ気なく言ったために、とうとう気が付かなかった。
とりあえずクレイは手近に落ちていた手ごろな枝を手に取ると、ヘビの首元めがけて切っ先をぐいと突き刺した。鱗で覆われたヘビの皮はそう平然とは貫かなかったが、力任せに木の棒を突き刺しては薄くなり始めた皮を無理やり引っ張ること数回。ぐいと引っ張った拍子に、嫌に生々しいぶちんといった音を軋ませ、ヘビの皮がべりべりと破けていった。内臓をぶちまけながら綺麗に皮を剥ぎ取ると、長い木の棒にその間抜けなほど白い蛇の肉を突き刺し、焚火の側の土にきつく刺した。
「そこにあるの、食いなよ」
エルシーが顎をしゃくる。焚火の側には、何かの幼虫が苦悶の姿のままに火あぶりにされていた。先端に蛋白質を掲げた短い木の棒を土から抜き、エレアとエルシーの間に重たい動作で腰を下ろした。
「あれ、エルがやったんですか?」
手に握った木の棒の先の芋虫を視界の中で揺らしながら、くいと顎で焚火を指し示す。肯定の意を示すようにうーと唸ったエルシーの口からは、くちゃくちゃと水っぽい音がしていた。
「その場で行動できる人間が行動する。当然のことだよ。クレイはダウンしてたし、エレアはクレイのことずっ
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