33話
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、あの島に行ったほうがいいんじゃない?」
エレアが遠くを指さす。
リゾンテはそもそもリゾートコロニーだ。海洋上にぽつぽつと存在する孤島は、なるほど避難するのに適している。さらに、確かこの海域はキャンプ目的として設営された孤島が点在する区域―――島に洞窟が点在しているハズだ。仮に豪雨に襲われても雨を凌げる。
一見ぼんやりしているように見えて、流石はエースパイロットということか。
エレアと顔を合わせる。事情を理解したエルシーも頷くと、ゴムボートの進路を近くの島へと向けた。
「公務員の方々は仕事熱心なことだ―――」
皮肉たっぷりに呟いたクレイは、疲労に浸された肉体に鞭打った。
バケツをひっくり返したような雨、という豪雨の比喩がある。なるほど急激な雨を表現するには適していることを、クレイは肌身で感じていた。雨が降っているとは思えない、雨が大地を打ち付ける音に身を竦ませる。コロニー育ちのクレイには、雷の音よりもこの異様な雨の音の方が堪えた。それでもなんとか海際に生えていた直生植物に覆われていたヤシの木にゴムボートから伸ばしたロープを括り付け、固定させるところまではなんとか身体を持たせたが、クレイの体力もそこで限界だった。へなへなと砂浜に腰を下ろした。
恨めし気にゴムボートを眺める。
当たり前だが、ジオン共和国軍は海やら熱帯雨林での戦闘を想定した装備など持っていない。持つ必要がそもそもないのだ。旧ジオン公国軍の装備もほとんどが地球に取り残され、そして地球連邦軍に接収されている。ゴムボート自体は軍が用意したものだが、ちゃちな様は民間用の、対して高くも無いものだ。当然ビーコンだと無線だとかそこらへんの機能も持っておらず、自分たちの位置を知らせる手段も無いというのが現状だった。
「仕事熱心なのも困りものだ!」
自棄気味に声を張り上げる。
「なんか言った? 聞こえないんだけど!」
同じようにエルシーが声を張り上げた。自棄を加速させたクレイは、ムスッとしながらエレアに目をやった。
打ち寄せる黒白の波と痛い程の雨に晒されながら、むしろ楽しげに砂浜をひょこひょこ飛び跳ねていた。
子どもは雨を喜ぶという。だがいくらなんでもこの雨を喜びに変換できるものなのだろうか―――? 子ども、という存在にとんと興味が湧かないクレイには上手く想像できないが、それが子どもというものなのだろう。17にもなれば子ども、という歳でもないが―――。
「なあ!」
「わぁ!?」
不意に耳元で炸裂した甲高い声にぎょっと横を見れば、彼我距離20cmの位置にエルシーの顔があった。
「そろそろ! 雨宿りができるところにでもいかないか!」
彼女のきんきん声が鼓膜を容赦なく突き刺す。聴覚野が鈍くなるのを感じながら、ぶんぶんと首を縦に振って肯定の意を示したク
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