32話
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ズに比べれば、大分―――というかとんでもなく熱かった。流石熱帯の気候を再現するだけは、ある。
上半身と四肢を露出するハーフパンツ型の水着故にSDUを着ている時ほどは暑くはないが、赫い光にじりじりと肌が炙られていると立っているのすら億劫だ。ビーチパラソルの下にすごすごと退散すると、ビーチチェアにごろりと寝転がった。
「お前はもやしかよ?」
声の方に顔を向けると、ヴィルケイとジゼルが佇んでいた。陽光やビーチすらも、ヴィルケイの容貌を引き立てるためだけに存在しているかのように思えるほどに、眼前の優男の水着姿は似合っていた。
「まぁ、もやしの割にはマッチョだけどね」
大胸筋を突くジゼル。軍人ですからね、と生真面目風に応えながらも、素早く視線を振る。前かがみになったジゼルの編み込んだもみあげが垂れ、その毛先の間の空間に目をやれば―――無意識に手を口元に当てた。無意識下に表情筋が弛むのを手で押さえつけているのである。
彼女の姿が視界を掠める。極まりが悪いような、妙に漠然とした感触―――。
「お、来た来た」
身を起こしたジゼルがコテージの方に視線をやる。寝そべったまま、身体を逆反りさせてその視線の先を追う。
熱で歪んだ視線の向こうに、彼女はいた。フェニクスに手を繋いでどこか覚束ない足取りでおっかなびっくり歩くさまは、ともすればそのまま不知火の先に融けてしまいそうにすら見えた。
半ば衝動的に真っ白なプラスチックのビーチチェアから身体を起こしたクレイは、改めて背後に視線をやった。
熱いな、クレイは思った。太陽のせいだろうか―――そうだろう。太陽のせいで戸惑いも無く人を射殺する人間がいるくらいなのだから、太陽のせいで心臓の鼓動がせっかちになってもちっとも不思議ではない。
途中までフェニクスと一緒に来て、そうして途中で何か言葉を交わした後、フェニクスはコテージの方へと戻っていった。
ちょこちょこと歩を進めてきた彼女、エレア・フランドールの白い肌がビーチの白砂が反射した陽光を孕んで艶めかしく閃く。子どもっぽい見た目に反して、黒のビキニにシースルーのパレオはとんでもなく大人っぽかった。俗っぽく言えば、エロかった。
「どうかな?」
自信なさげに身を縮めたエレアが上目づかいでクレイを仰ぎ見る。
自分に聞いているのか、と把握するまでしばし時間がかかった。そうしてハッとしたクレイは、大仰に咳払いをし、落ち着き払った様子を繕うためにわざとらしく両手を腰に回した。
「とてもよろしいかと」
こくこくと頭を垂れる。
はぁ、とヴィルケイが溜息を吐いた。
「お前ね、もうちょっと良い言い方は出来ないのか?」
「はい?」
さっぱりわからない、といった風にヴィルケイに視線をやると、声色通りの呆れ顔をしていた。ジゼルも梟みたいな
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