31話
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が! 露わになった柔肌を拝めないなんてナンセンス極まりねぇ!)
がたがたと通信ウィンドウが揺れる。コクピットの中で暴れたせいで機内カメラが揺さぶられているのだろうか。
ヴィルケイにとって水着は―――正確には女はそんなに甚大な価値を持つのだろうか。持つのだろう。アイルランド系とはいえ、ヴィルケイにはイタリアの血が流れているのだ。戦争するのは下手くそだが、パスタを茹でることと女に全身全霊を賭ける長靴の血筋がそうさせているに違いない。
(ヴィルケイ、いいモノがある)
ウィンドウの中で攸人がにやりを笑みを浮かべる。何事か攸人が操作すると、不意に多目的ディスプレイに別にウィンドウが立ち上がる。
(こ、こいつは……!?)
――――――水着、だった。
もちろんデパートに陳列されている誰のモノでもない水着ではない。その水着には持ち主が―――つまり、水着を着た何人かの女の子たちがキャッキャウフフしながらビーチバレーに興じている映像だった。というか、同じ部隊の同僚たちの水着姿が映し出されていた。
ビキニにタンキニに、あるいは競泳水着のようなデザインの連邦軍女性用水着など多種多様な水着に彩られた柔肌がぴょんぴょん跳んだり跳ねたりしている様を食い入るように見つめるヴィルケイは、おそらくこれがどうやって撮られているのか聞くようには思えない。むしろそんなことは問題とすら思うまい。
「これ、誰が撮ってんだ?」
クレイもまた、人生が豊かになりそうな映像からは目を離さず、攸人に無線を入れる。
(オーウェンだよ。 何もすることないって言ってたからちょいとね)
ははぁ、と納得の溜息を吐いた。
《FAZZ》は既に実証済みの機体故に、オーウェンにとって耐環境試験は全く無関係な話なのだ。それにしてもわざわざこんな頼みを聞き入れるのか―――茫洋とオーウェンの顔を思い浮かべる。任務上あまり一緒になることもなければ、寡黙な人物らしいオーウェンは未だによくわからない人だった。
―――圧巻なのはジゼルだった。ビキニなのに本気になってボールを追いかけているから、胸の上部に溜まった脂肪と夢と希望の塊がばるんばるんと躍動する様はもはや詩的とすら呼べよう。痛そうだな、とも。
うーむと唸る―――誤解しないように敢えて叙述するが、決して瑞々しい形而上学肉体の蠱惑に屈しているわけではなかった。もちろんそれも重要なのだが。何よりクレイの気にかかったのは、エレアが居ないことだった。あの銀髪の少女はそれだけで目立つ存在である。ただ映っていないだけかと眉に力を込めてみたが、やはりエレアの姿は見られなかった。
よくよく見てみれば、フェニクスの姿も無い。エレアのフィジカル・データの詳細は隊長であるフェニクスが管理している。もちろん、オーガスタ研から派遣されて来てい
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