27話
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しているようだった。
フェニクスが手を上げると、巌のような男がこちらを向く。膨れた随意筋の群れに、プロの格闘家のような峻厳な顔はもはや筋肉もりもりマッチョマンという陳腐な形容しかできない男の顔が、パッと明るくなった。
「あら〜! フェニクスじゃないの」
「久しぶりだな。いつぶりだ?」
3年前かしら、とスキンヘッドの男がころんと小首を傾げる。まるで無垢な少女がするように、だ。
カウンター席に座ると、男がにこりと笑みを向ける。人当たりの良さそうな笑みに、案外落ち着いた声色だ。柔らかい物腰は、いい人そうだなと思わせるのには十分だった。
「このムッシューは誰かしら? 今カレ?」
「残念ながら部下だ。まだご無沙汰だよ」
「あら! じゃあこの子が?」
禿頭の男が好奇の瞳を向ける。値踏みしているようにも見え、内心身震いした。そんなクレイの内心を察知した禿頭男は、さらにわざとらしく意味深な流し目を投げやった。
「例のもの。あとは適当に頼むよ」
猫なで声で応じた男が店の奥へと引っ込んでいく。
この店の常連、なのだろうか。視線だけフェニクスにやれば、職務中の凛乎とした目つきはなく、柔らかな顔立ちは安堵を感じているに違いない。クレイも自然と肩の力を抜いて、カウンターの向こうに並んでいるワインやブランデー等その他もろもろのボトルをぼんやりと眺めた。それが高級なのか、それともちょっとしたポケットマネーで買える程度のものなのかは、よくわからなかった。フェニクスも、漫然と店の奥に視線を投げているらしい。
運ばれてきたワインだのジンだのをグラスに注いでは口に含み、そうして些末な雑談を交わすこと十数分。白ワインのボトルをたちまち2/3まで減らしても、隣に座る女性は大して酔った様子ではなかった。
「飲まないのか? これ結構うまいんだぞ。『大帝の白』だからな」
無造作にグラスに白い液体を注ぐと、軽くワインをくゆらす。この後も色々やりたいことがあったのだが、と思ったが、今日は止めておくことにした。たまには羽目を外してもいい。少量だけグラスに注いでしばし眺める。そうして口に運んでみたが、味の良さはさほどわからなかった。
「正直よくわからないです…」
「高級ワインなんてのは」と今度はグラスに並々と白ワインを湛えたフェニクスが言った。「金持ちの道楽だ。味なぞ大して変わらん」
「ならそんな雑に飲んでほしくないんだけど?」
店の奥から顔を出した男が大仰に顔を顰めて見せる。それほど高いものなのだろうか、とフェニクスの手前に居心地悪そうに佇立するワインボトルのラベルを見たが、酒に関してはさして理解がなかった。
憤慨をさっさと払いのけ、にこやかな笑みを見せた男がクレイの前に白い陶器の皿を差し出した。一礼して受け取れば、どうやら肉料理のようだ。それに合わ
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