27話
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フロントガラスから向こうを見ながらふと思いついたことを言ってみる。何気ない会話など何気ない話題でいいのである。
が、何気ない話題にしたつもりだったが、フェニクスは何故か静かに唸り声を上げると、押し黙ってしまった。そのまま5分ほど黙然としてから、咳払いしたフェニクスがこちらをちらと一瞥した。
「ジャックなら元気にしているぞ」
「なんか触れてはいけない話題でしたかね……」
「そんなことはないぞ。どんどん触れろ」
「いや、いいです……」
何故か不機嫌になったフェニクスは片手でハンドルの下の方を掴んだまま、梟のようなジト目をしてしまった。上官の機嫌を損ねてしまったことに慌てていると、彼女はすぐに微笑を浮かべた。
「冗談だよ。別に大したものじゃない」
微笑は変わらない―――嘘だ。表情筋は確かに微かにも動かなかったが、影が出来たその顔はどこか―――寂しげだった。夜だから、影が強いだけだろうか? 脇目でフェニクスの姿を見たクレイは、再び視線を前に向ける。丁度、左手の方に今となっては珍しいガソリンの二輪車が並んだ。
「そうだな、ティターンズ入隊からちょっと後だから―――24歳の時に目覚めたんだ。なんでかは知らんが」
「あぁ、そういえばグリプス戦役のころから軍人なんでしたっけ」
「まぁな」
信号が青に変わる。LEDの無機的な明るい閃光が網膜を刺激し、滑るように加速したエレカが道路を往く―――。
それから10分ほどして、メインストリートからやや外れた外部駐車場の2階に停めると、目的地はそこから歩いて2分もかからない場所だった。
現代的なビル街の中にあって、その建物はやや奇妙だった。店先に出されたホワイトボードや店の看板のデザインはどこかクラシカルで、木製の引きドアの取っ手も使い込まれてメッキが剥げている。サイド3の短くない歴史の初期に店を構えた、といった風采だった。
看板に書かれた文字は―――フランス語、だろうか。
quatorzi?me chat―――?
「どうした?」
看板を仰いでいると、ドアを開けたフェニクスが訝しげな視線を向けた。
「これ、どういう意味なんです?」
「ん? あぁ、えーっと、猫―――だったかな。14番目の猫、だっけ」
「猫?」
もう一度看板を仰ぐ。流暢に書かれた金色の文字にどこか高級感があるが、それにしてもバーで猫というのも奇妙な名前な気がする。それこそもっとファンシーな店構えに似合いそうな語呂だと思うのだが? まぁいいか、とフェニクスが開けたままのドアを潜った。
薄暗い店内にはテーブル席が並び、静かにアルコールを楽しんでいる老紳士やら若い企業家と思われるインテリ風な男とその家族が小さな祝賀を開いていた。カウンター席にも2人ほど人がおり、その向こうにスキンヘッドのいかつい男が客と何かを談話
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