26話
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「もう乗ってもいいか?」
チベ級ティベ型重巡洋艦『シャルンホルスト』の格納庫の中、ノーマルスーツに身を纏った琳霞は、《ハイザック》のコクピット前で何事か仕事をしている整備兵へと声をかけた。特に驚きもせずに振り返った壮年の男は苦笑いのような笑みを浮かべながら、「いいですよ」と親指を立てた。
無重力に身を任せて背後に去っていく整備兵から、白い《ハイザック》へと視線を移す。
これが《ゲルググ》なら―――掠めた思案を振り切るようにヘルメットのバイザーをおろし、《ハイザック》のコクピットに飛び込む。シートに身体を固定すると、素早く機体ステータスをチェック、ついでシート周りの微調整もし、中隊長に諸準備完了の報を入れれば、他の同僚と部下たちの調整が終わるまで束の間の暇がある。
電気がついた全天周囲モニターから虚空を眺める。丁度前面のガントリーに位置する灰色の《ハイザック》の単眼が点灯し、02のコールサインの無線から完了のコールが鳴った。
生体維持機能により呼吸に最適に調整された空気を肺に吸い込む。
案外緊張していない。他の赤い感情も、琳霞の胸の中では薄く遍在しているだけだ。だが、それは決して臆病風に吹かれているというわけではない。青く滾る闘志は、確かに琳霞の胸から両腕へ、あるいは全身に満ち満ちていた。
(02より中隊各機、傾注)
コールサイン02のウィンドウが立ち上がると同時に、隊員全員の通信ウィンドウが展開。01の通信ウィンドウがフォーカスされる。
(01だ。いいか、今回の教導任務は対サイコミュ兵器想定の演習、という名目だ。数的優位はこちらにあるが、不利なのはこちらと考えていい。負けて当然と言えば当然の相手だ)
だが、と中隊長の声が重く耳朶を打つ。自然と、琳霞が操縦桿を握る手の力も強くなる。
(カタログスペック上は敵機が有利だが、相手の機体の多くはまだ試作機―――兵器としての評価には不安が残るといっていい。それに教導隊とはいえ相手はルーキーが2人だ。決して勝てない相手ではない。いいか、勝つぞ)
応の通信が連続しておこる。琳霞も声高に応じ、眼差しの先に明確な輪郭を捉えた。
(01より中隊各機に告ぐ。連邦のエリートどもにジオンの底意地を見せてやれ!)
※
「よお先生、何かいいことあったか?」
ヴィルケイはいつも通りの緊張感のない笑みを浮かべていた。そうですか? と平静を装ってドリンクを飲みながらも、確かにクレイもヴィルケイの言葉に頷くところだ。
「顔がにやけててキメェぞ」
「笑顔で中々えげつないこと言いますよね……」
冗談だよ、と満面の笑みを浮かべたヴィルケイが勢いよく背を叩く。直後に鳴った機体搭乗の艦内放送のせいで結局ぎこちない反応を返したクレイは、手早くパ
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