26話
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想定というのを忘れずに。通信記録はとってありますので」
(おう、わかってるよ)
ぐいと親指を立てて見せる攸人―――通信ウィンドウの向こうで、振り返った露軍迷彩(・カモ)の《リゼル》が器用にサムズアップしていた。クレイも特に必要なかったが、ビームライフルを掲げて敬礼っぽい格好をしてみせた。
(さて、と。じゃあ作戦通り、俺と02のツートップで03は後衛で)
(は〜い)
低出力にスロットルを入れ、フットペダルを踏み込むと、スラスターとバーニアを焚いた3機のMSが星海を泳ぐ。AMBAC機動によりできるだけ推進剤を消費しないようにしつつ、スラスター光による露見リスクを抑える。静かで寒々とした管制ユニットの中は、己の吐息とハムノイズの音だけが響いていた。
(02、コンタクト。敵機4。敵未だ索敵せず)
02の報告と同時に機体側のセンサーが補足する。レーダーに映った敵機表示の光点(ブリップ)は4―――機種特定RMS-106ESが4。
ふと疑念が掠める。現在多くの場合にあって、MS1小隊は3機で編成される。そして補足した敵機の数は4―――中隊規模が相手であるから数上は問題ないが。
「ES(砲撃)型が4? 2機での待ち伏せ(アンブッシュ)で最優先目標を撃破―――か?」
(セオリー通りだな。うーん違ったかな?)
少し攸人が困り顔をする。エレアは特に何か言うでもなく、ぽかんとしていた。
「いや、多分お前の予想(・・)も当たってはいるんだろう。じゃなきゃ陽動を4にはしない」
(だよな。んで、ハイデガー君はやや過小評価されてるけどそこんとこどうなの?)
「見くびりには最大の敬意をもって歓迎しよう」
ふふん、と鼻を鳴らして見せる。攸人が鋭い笑みを童顔に浸透させ―――エレアは無邪気な笑みを浮かべていた。
エレアは見て(読んで)いなくともそれとなく察知しているだろう。相手が見くびるはずがない―――おそらく、本丸と想定される2機のパイロットは相応の技量のハズだ。攸人も、多分理解している。
(よーし、じゃあ砲撃した後いっちょマグロにでもなりますか。タイミングは02に任せる)
「まぐ…? あぁ、03了解」
(02、ウィルコ。ばっちり合わせてね)
通信ウィンドウ越しにエレアがウィンクする。了解の合図をしながら、クレイは右腕に握らせたビームライフルを掲げた。
※
真っ暗だ。視界を占めるのはただの黒。黒。黒。ヘルメットのバイザーと各計器が凍結しない最低温度も相まって、棺桶の中もかくやといった様相だ。ただ、呼吸の音だけが熱をもって唇を舐める。
合図はまだ。
息を飲む。
あと、そろそろ―――。
※
(02、ボギー03中破)
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