26話
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スロットルをアイドル出力から徐々に上げ、フットペダルを踏み込む。リニアカタパルトに乗った全高25.42mの漆黒が、宵の中へと弾き出されていった。
E-2演習区画。サイド3の周辺宙域に措定された演習宙域のうちの1つであり、コロニー建設の際に破棄された宇宙ゴミ(デブリ)が集積されている。
視界に流れていく岩塊をそれとなく意識しながら、前面に展開する2機の《ゼータプラス》と《リゼル》の背を見やった。
武装は全機、AMWD-87K―――スネイル型の弾倉のビームライフルで統一されている。砲撃による中・遠距離での敵機殲滅を重視する案もあったが、デブリが多い場での砲撃戦重視は愚策という結果からの装備だった。
(く〜武者震いするねぇ)
お道化たような身振りを敢えてしてみせる攸人。流石に操縦桿から手を離すようなことはしなかったが、気の抜けた顔に思わず力が抜ける。
微笑を洩らしながら、クレイはエレアの顔を伺った。屈託なくころころと笑っている彼女になおのこと安堵を―――そして少しだけ胸がむずがるように蠢動したのを覚えたが、後者は無視した。
「一応だが、油断はするなよ」
(わぁーってるよ! ったく、中尉の彼氏さんは気難しいんだから。ねえ?)
(そだねー)
「む…」
何か釈然としないものを感じたが、特に何も言う必要はない。とりあえず、エレアが満足しているならそれでいい―――。
(小隊各機、傾注!)
全く不意に、攸人が声を張り上げる。ぎょっと目を見開くと、いつにもましてクソ真面目な顔をした攸人の顔が通信ウィンドウに映っていた。ごくりと攸人が生唾を飲む。彼の生体データを見てみれば、やや緊張気味らしい。
(誰が飼い主なのかをジオンの連中に教導してやるぞ。いいな!)
(了解)
「応」
―――束の間の沈黙の後、不意にフォーカスされた攸人の通信ウィンドウがでかでかと表示された。
(今の、格好良かった?)
「はぁ?」
何を言っているんだと攸人の顔を見返す。格好いい―――さっき言った言葉が、だろうか。
「悪くはないが、ちょっと過激じゃないか? こう、政治的配慮とかがあるだろう」
(えー? 別にローカルだし聞こえないだろ)
「いやそうだが」
(中尉はどう思います?)
(わたしはかっこいいからいいと思うよ)
(お、ありがとうございます!)
「むむ…」
何か、釈然としないものを感じた―――が、これも攸人はわざとやっているのだろう、と見当づけた。部隊長ともなれば、単に鞭打てばいいというわけではない。時に活気づけ、時に和ませる。その実践、ということか。クレイ自身も悪しざまに思っているわけではないから一向に結構なことだ。
だが、敢えて自身にすることがあるなら―――。
咳払いを1つ。
「小隊長? 演習とは言え実戦
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