23話
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
黒いカンバスめがけて黄色い絵の具に浸した筆を振り下ろす―――顔料が黒い布地の上に跳ね、大小様々な恒星が閃いていた。
遥か数光年先で幽かに煌めく恒星の囀り。
そのハルモニアで満たされた温かな光の群れの中を、暴力的な―――むしろ暴力そのものといっても過言ではない閃光が屹立した。
(コマンドポストよりオーダー03、胸部コクピットに致命的損傷を確認。当該宙域より離脱してください)
(クソッタレ! 連邦風情に好き勝手なこと―――)
(オーダー02、左腕部に損傷―――胸部に致命的損傷を確認、大破と認む)
立て続けに迸る大出力の光軸。
雨霰と降り注ぐ対MS用ミサイル。
殺戮だ―――次々に届く味方機撃墜の報に、オーダー06は身震いした。陽動を引き受けた1個中隊はほぼ壊滅。3機を削られた中隊の殲滅まで、もう1分とあるまい。
たった2機を相手に―――。改めてぞっとするのもつかの間、無線通信のコールが入る。
(04より小隊各機、これより予定通り敵機を挟撃する。ブリーフィングで確認したことを忘れるなよ)
了解と応じる―――そうして、オーダー06は体面上の恐怖は押し殺した。
敵はFA-010C/D《FAZZ》が2。対第4世代機想定教導にて合いまみえることとなった敵の編成に対して、ジオン共和国国防軍の部隊編成はRMS-106E《ハイザック》が12機。実に1個大隊を投入した上で執った作戦が、砲撃型の《ハイザック》1個中隊が正面から砲撃戦で陽動、1個中隊が左右に展開して挟撃して敵の対応力を上回るというものだった。
12対2。単純な数的優位なら国防軍側に利がある―――逆に言えば、数的優位しか彼らに許された利点はない。
レーダー上に赤いブリップが映る。同時に、全天周囲モニターの中でロックオンマーカーが表示され、『人工の宇宙』に白亜の巨躯を捉える。
(オーダー04より小隊各機、連邦のエリートどもにジオンの意地を見せつけてやるわよ!)
※
「エレアはこれ知ってるよ」
ぱたぱたと足を動かす少女が無邪気な笑みを見せる。なんでしょう? と尋ねるクレイの声はいつものように冷静を装っていたが、心臓は小刻みに身震いしていた。
「ぎゃくさつって言うんだよね。ね?」
何故か自分の膝の上に座ってブリーフィングを受けるエレアが振り返る。身長150少ししかない彼女の矮躯を抱えることに、体力的な困難はないし、クレイはその事実に困難さは欠片も感じてはいない。ただ、彼女のその肢体の柔らかさに困惑する。BDU越しでもわかる女の肉。クレイ・ハイデガーは、顔を顰めるどころかほぼ無表情だった。無論彼女のその身体の蠱惑にはまだ慣れていないが、公私を混同しないという心掛けは十分している―――その割に彼女の身体に手を回している? これは
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ