22話
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なると、そのままエレアの身体に腕を回す。そうして、そっとエレアを抱き寄せた。
温かくて、柔らかくて。その知覚だけで、クレイは勃起してしまっていたが、それでかえって哀れだった。
彼女は、ただ戯れるだけでご満悦のようだったが、クレイは不満足だった。もちろん、今まで焦がれていた相手を身近に感じて、好きという感情を直上的に孕んだ眼差しで見られるのは味わったことがないほどの「甘ったるさ」を惹起させてくれるし、その気持ちだけでほぼ満足しているのは確かなのだ。だが、そうしたプラトニックな面の一方、もっと物理的快楽的な側面では、なまじ彼女の身体に触れられることで生殺しにあっているようだった。エレアは、セックスをすることにはひどく消極的だった。無論、「そこ」に触れることも。曰く「死ぬほど恥ずかしいから」。したいといざ口にしただけで真っ赤なパプリカのように顔を赤くしてクレイの行為をはねつけたのである。
思い出すだけでも恐ろしくなる―――胸が潰れるほどの哀しみを思い出して、居た堪れなくなった。エレアは必死に、決して「したく」ないのではないと弁明していたし、多分そうなのだろうと思う。だから、別に―――本心はしたくてたまらないのだが―――クレイは、それについて深く追求もしなかったし、プラトニックな充足に安穏とすることにした。
それにしても―――と、彼女のくびれに手を這わせ、臀部の柔らかさを指で感じながら思う。
エレアは、寝癖は悪くない……と、思う。だが今日は勇敢にもクレイの顔面をどうやらビンタして腹に膝蹴りを食らわせてくれたらしい―――というのは、ひりひりと痛む頬と鈍痛のお蔭でわかった。
何か嫌な夢でも見ているのだろうか。薄暗い部屋では彼女の顔は窺い知れず―――ちょっとだけ聞こえる唸り声からしてやはり悪夢だろうか。
微かに口が蠢く。はて、何と言ったのか。耳を澄ませてみたが、彼女が何かを口走ることは無かった。結局何分か―――あるいは何十分かほど、ただ身体を触れあわせた後、彼女の寝息はいつものように静かになっていた。エレアの太腿の肉とオーバーニーソックスの感触の違いを確かめていた手をひっこめ、彼女の頭の下に自分の枕を滑り込ませると、身体を起こした。なるべくマットが沈まないように慎重に起き上り、エレアの上を覆いかぶさるようにしてのそのそとベッドから這い出る。ひやりと冷たい空気の感触を気にもしなかった。
特にすることもない。だから、クレイは「窓」に近寄った。
ニューエドワーズの宿舎には窓なぞない。
そもそも、今クレイが寝ている部屋は宿舎ではなかった。
窓から外を覗く―――窓の外には、電気のついていない自室の暗さよりも、さらに冥い世界が広がっていた。
アーガマ級強襲巡洋艦3番艦《エイジャックス》。既に連邦では使わなくなったアーガマ級巡洋艦を、サナ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ