21話
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うな印象を受けるが案外人間味がある。だからこそ、この男がエレアを物のように言う物言いにも、フェニクスは露骨に嫌悪を表さないのだ。
「悪魔のような残忍を働いたのは、実は陳腐な小役人だった―――という話はご存知ですか?」
「は?」
「いえ、なんでも」
男はなにか言いかけ、押し黙った。
上から命令という名目で人を殺戮した人間と、上からの名目で人の心を弄ぶ人間。程度の差異はあれ、そこに本質的差異などあるはずもない。腕組みしてモニターを眺めながら、フェニクスは少しだけ右足に体重をかけて楽な姿勢を取った。
ビームサーベルを抜刀した《ゼータプラス》が《百式改》に襲い掛かる。ビームライフルの応射は無意味に宇宙へと飛んでいくだけだった。
「まぁでも―――」
フェニクスが言いかけた言葉は、モニターの中で爆ぜた言葉に飲まれた。
※
「いやー良い風だねぇ」
うんと伸びをする。程よくアルコールの入った身体に、やや角張った夜のそよ風は程よい心地よさだ。栗色の髪の少女―――マリーダ・クルスも、エイリィに同意するように頷いた。
鉱物資源衛星群パラオ。複数の小惑星と岩塊が連結シャフトで結合されることでできた鉱物資源衛星の中でも三角錐状の岩塊『カリクス』には3万人の人間が住む。コロニーと同原理によって居住を可能とした『カリクス』居住ブロックにも、地球やコロニーと同じように風が流れる。やや頽廃的なところも、やはり地球と同じなのだろう。
「んでどこ行くの?」
マリーダ、と前を歩いていく少女に声をかける。
翌々日から新たな任務に就くということで、マリーダが『パラオ』で過ごす家でのパーティに招かれたエイリィは、無事に―――テルスの手料理を食べた複数人が顔を顰めたこと以外は―――パーティが一頻り済むと、マリーダに連れられてどこかへと連れられて行かれることとなったのだ。
髪の色も、触り心地も、肌の柔らかさも、プルートと似た少女が振り返る。
目の碧さも同じ―――無口なところはちょっと違う。
大人びた―――というより老成した、といってもいいほど年恰好に似合わない静かなマリーダが、顔に困惑を匂わせた。
「その……さした問題ではないのですが……」
珍しくマリーダの歯切れが悪い。出会ってから数日しか経っていない間柄だが、彼女の人となりはおおよそつかめている。
古くからの知古というわけではないが、マリーダ・クルスとは馬が合う。真面目気なマリーダに、気軽なエイリィの組み合わせは自然と重なり合うところがあるのだろう。こういう手合いは普段から接しているだけに、口数の少ないマリーダと一緒にいるのも苦には感じなかった。
サントの家から数分、「カリクス」の居住ブロックでも市街に当たる部分を過ぎ、広大な貯石場が目
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