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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
19話
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ンジングしなきゃいけない」
 反省点を滔々と述べながらも、クレイは内心頬が緩む思いだ―――。
こういうところがまだまだ青臭いガキなんだ、と冷静に思う。少し褒められただけで良い気分になるなど―――意図的に、クレイは顔を固くした。
「まぁそこはこれから詰めていけばいいんじゃない? 5年10年―――それこそ20年は先に活きてくるデータなんだし、焦ることはないよ」
 相変わらず謙虚なんだから。
 ばしばしと背中を叩く紗夜にはなんの頓着もない。そうであるが故に、愛想笑いを浮かべながらも己に不釣りあいな称賛に内心居心地の悪いものを感じた。
「スタリオン、ちょっといいか!」
「ほーい! じゃあこれで」
 軽く敬礼を交わすと、無邪気な笑みを浮かべた紗夜が身を翻し駆けていく。ひょこひょこと揺れる健やかな艶のある黒髪をなんともなしに見送る―――視線をそのまま先に延ばしていけば、クレイの視線を受け止める黒い巨躯の姿があった。
 紗夜の言葉―――自然と、クレイは先々日の実機演習を想起していた。
 結果は敗北。
 結果だけを鑑みれば、前に行ったシミュレーターと差異はない。だが結果だけを見て物事を論ずることは浅慮だ。その内容を粒さに精査すれば、むしろ良い結果だと言える。
 エレアがどれほどの腕なのかは実体験でよくわかる。士官学校時代にやり合った『ロンド・ベル』の連中ですら相手にもなるまい。そんな無双の勇を相手に回し、今回の戦闘継続時間は7分強。敗北について思うところは夥しいほどにあるが、5分と持たずに大破判定を貰った時に比べれば随分な進展ではないか―――何がそうさせたのかがわからないのはもどかしいが。単にエレアの調子が悪かった、というだけなら手放しでは喜べないのである。
「―――ハイデガー?」
 思案の海の埋没からクレイを掬ったのは、不意に肩を叩いた声だった。
 思わず顔を挙げれば、普段は見せない柔和な笑みを浮かべたフェニクスの顔があった。
「なんだ、また考えごとか」
 逡巡―――不意に眼前に上官がいる、というその事実に身を竦ませるや否や、傍目でもわかるほどに急いで右手を額に添えた。
「し、失礼しました!」
「今度から気をつけろ」
 クレイの敬礼への返礼をしながら言うフェニクスは嫣然とした笑みを浮かべるばかりだ。
「了解!―――しかし大尉自ら、どうしたんですか?」
「あぁいや、ちょっとな」
 敬礼を解いたフェニクスはどこか気まり悪そうな顔で、なんとも歯切れの悪い言葉を残した。
 珍しい―――二重の意味で。フェニクスと会ってからまだ2月ほどだが、おおよその人となりは把握している。クレイの知るフェニクスと照応してみると、こうして歯切れ悪く言葉を濁して困ったような顔をする彼女はどうにも不自然―――変だ。
 そしてわざわざ中隊長が出向いて何か言
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