暁 〜小説投稿サイト〜
機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
18話
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
闘にもつれ込めば、砲台という名のシールドはデッドウェイト以外の何物でもない。
 展開すれば20mを超える《ガンダムMk-V》の巨躯と比べても謙遜のない長々といた槍を2本。
ムーバブルフレームによる人間以上の稼働を許されたMSという兵器であるからこそ成しえる双槍の構え。
 VIBSであるから、展開される赫い刃はCG補正の産物―――それでも血色の刃は、猛々しくも凛々しい牢乎の荒武者に相応しい武具であろう。
 ―――大砲と火器の誕生により旧世代の遺物と化した騎士や武者。
剣と槍を構える20mの巨人が相対峙し、ぴんと張ったピアノ線のような空気感を漂わせる様は、現代における古の兵の再現だった。
 先に動いたのは2槍の武者。
 呼応するように剣を構えた騎士がバーニアを迸らせる。
 光の尾を引いた2機の巨人が交錯し――――。
 ※
 MSが単機でやり合った場合、長く見積もっても5分で決着がつく。そのあまりにも味気ない数値が算出されたのは、一年戦争時のジオン公国においてであった。この数値はMSの性能や戦術が進展してなお、大きく変動していないという。
 戦闘指揮所の大型モニターに映る戦闘はその5分という壁を2分超えてなお終わりを見せない。
 エンジニアという職業柄、この映像がどれほど高度な戦闘かはわからない―――それでもモニカは、四方八方を塞ぐ灼熱の檻に怯むことなく剣戟を重ねる2機のMSの戦闘に感嘆を覚える。これがライブ映像ではなく記録映像であり、既に3度目であっても、セピア調のメガネをかける暇もない。そんな私的な感動もともかく、サイコフレーム搭載機の実戦形式稼働試験によるデータの収集には、色々な人が小躍りして喜んでいるに違いない―――流石に『ヴァルキュリア』の再現こそ観測できなかったが、戦乙女の力をクレイ一人で引き出させろというのも酷な話だ。
「遊びと言いながら徹底して単機での対ファンネル戦を行使するあたり、あいつも負けずぎらいだな」
 同じように、モニターの映像を眺めるフェニクスは色のない声で言った。
 グリプス戦役から7年、実戦で錬成されたフェニクスの戦術眼には、きっとモニカには見えていない高度なロジックがこの映像の中に犇めいているに違いない。
「フランドール中尉も結構本気ですよね。最初はサーベル1本だったのに最後の方なんていつも通り2本構えた上でファンネルまで使ってましたし」
「前は前で事情があったが、今回は本気だからな」
 どこか含みのある声色に、なんとなくフェニクスの顔を伺う。
 冥い部屋にぼうぼうと照るモニターの光を受けたフェニクスの顔は、いつにもまして鷹のように峻厳とした目つきをしていた。
「それにしても『槍』が使える人がいて良かったですよ」
 あまり先ほどの話題をしない方がいい、と思ったモニカは、とりあえず話題を変え
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ