18話
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に振るい、規定進路をまるで無視して機動させるのは己が駿馬の良なるを測るためであるが、チェイサーを務めるエレアの力量を確認するためでもあった。もちろん、彼女の強さは身をもって理解している。クレイを一方的に制圧したあのシミュレーションからまだ2週間と日はたっていないし、時折エレアの実機試験を目にしていればその威に異を唱えることがいかに凡愚の所作であるか知れるというものだ。
だが、自らもMSの胎に抱かれた上で、エレアの機体操縦を間近で見るのはこれが初めてであった。
クレイの機体挙動を完璧に模倣し、まるで過去の自分の素振りをそのまま写し見るかのような錯覚を与えさせる―――ニュータイプだからクレイの挙動を先読みできる、などという言葉はフィクションに身を浸した考えだ。高G下にあっては、一定の挙動を取らせること自体が困難である。仮に先読みで把握できたとしても、それをトレースして挙動を模倣することの困難さは変わるまい。
巨岩のすれすれを舐めるように沿う黒狼の主は、自分が嫣然としていることに、そして身体を震わせていることに驚きもしなかった。
フラッシュバックする光景。
妙なる神威の御業。
赤く灯る二つの熾火。
重なるさくらんぼの赤。
―――クレイ・ハイデガーはもう何個目かのデブリを蹴り上げさせると、一息に長躯の四肢を振り回した。AMBAC機動と各部バーニアを焚くことによる急制動と急反転の連続操作。対G強化型のノーマルスーツを着ていてもなお指先一つミリほども動かせない、歯も砕けるほどの超高G下、黒の孤狼はなおもってよく調教されていた。クレイ・ハイデガーの理想とする挙動を見事にトレースし、思い描いた通りに《ガンダムMk-V》が己を律する。
1秒とかからず真後ろに反転したクレイの眼前に飛び込んできたのは、ずっと向こうに静止する漆黒の痩躯だった。
HUDに投影された型番はMSZ-006X2。変わらずチェイスしていたはずのMSは、わずかな《ガンダムMk-V》の予備動作だけでもって急反転に対応してみせた。
(エイジャックスより02、08。お遊びの時間だ。思う存分やれ)
耳朶を打つ鐘のようなフェニクスの声。
幽邃に包まれた常夜、溶けるような黒の《ゼータプラス》が光の剣を一振り引き抜く。
砲撃戦と格闘戦のホライゾン―――《ガンダムMk-V》と《ゼータプラス》の彼我距離は砲撃戦を主軸にプランを練るには近すぎるが、格闘戦で一息に仕留めるには遠い。その迷いの中にあって、血色の双眸を閃かせる《ゼータプラス》は逡巡の後に―――逡巡もなく、その手にサーベルを携えた。
『遊び』―――その通りだ、と思った。だが与えられたチャンスは最大限に活かす。意気込みとともに、クレイはシールドの裏から折りたたまれた槍の2本を引き抜いた。
シールドは捨てる。近接戦
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