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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
13話
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イプ、とはそれほど信頼性の高い兵器でもないのかもしれないな、などと思う。殊に強化人間は、グリプス戦役初期に生まれたような初期型は情緒的安定性に乏しかったと聞く。それに強化人間といっても、自分のような出来損ないを生むこともある。全体としての費用対効果は決していいものではないのだ。軍人の実戦(コンバット)証明(プルーフ)至上主義も頷けるというものである。
 ―――欠陥品。
 ―――役立たず。
 ―――出来損ない。
 そんな言葉が神経を犯していく―――。
(ヴォルフ03、どうしたの? 大丈夫?)
 不意に通信ウィンドウがHUDに立ち上がる。はっと我に返ったプルートは脱力した身体に力を入れた。
 通信ウィンドウに映るのは30代ほどの女性だ。柔和に解けた笑みは彼女の本性を知っていることも相まって、縮こまった身体を自然と解きほぐす。
 プルートの《ドーベン・ウルフ》の隣に相並んだAMX-009《ドライセン》を一瞥し、通信ウィンドウの向こうにいる女性―――ズィッヘル02のコールで呼ばれるテルス少尉を見やった。
「いえ、何分初めての機体で、緊張してしまって」
 でもなんでもありませんよ。そういう意を含んだぎこちない笑みを返す。テルスがプルートに通信を入れたのも、部隊間データリンクで共有された生体データを見てのことだろう。故に生返事も無意味と言えば無意味だが、主観的事実としてプルートは今の自分の体調に差し障りがあるとは感じなかった。戦闘中に感じてしまう不愉快な感情は、任務だからと割り切ればさして気になるものでもない。それに、プルートが語った内容自体は事実だった。
(《ドーベン・ウルフ》に乗ってまだ20時間も経ってないだろ? それに、いつもと違うメンツで編成組んでるんだ。疲れもるのも当然だ)
 もう一人会話に加わる。
 ザミュ大尉は精悍な顔立ちこそマクスウェルに似た雰囲気だが、快濶な気質は寡黙なマクスウェルとは正反対だ。
 ふーん、とほけた相槌を打つのはテルスだ。大人しくしていれば、年相応の美しさを持つ彼女を美女と呼ぶことになんら抵抗はないだろう。だがいざ話してみればおっとりした言動とドジな素振りのせいもあって、近所の綺麗なお姉さんといった印象を持つ。
(それでサラミス2隻沈めたってんだから良い腕だぜ)
「でも私は後ろから砲撃しただけですし……」
(支援砲撃のつもりで敵艦沈めてた奴は誰だったかな?)
 快濶な笑みを浮かべるザミュ。隣の通信ウィンドウでもテルスがうんうんと頷いていた。もう一人のズィッヘルの隊員も、ザミュとテルスに同意のようだ。
 顔が赤くなるのを自覚する。褒められるのは嬉しかった。欠陥品なんかじゃないと思える瞬間はただただ嬉しいという感情が胸の内を満たす。自然と笑みがこぼれた。
 無論、プルートの腕だけが敵撃破を成したわけで
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