10話
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もなく、負荷Gに曝されながらロックオンレーザー照射方向―――背後を顧眄した。
どうと屹立する大出力の閃光を紙一重で躱す―――即座に足らない、と悟り、シールドをビームの濁流の方へ掲げる。高出力の飛沫がシールド表面の対ビーム被膜を瞬時に蒸発させ、ぐずぐずにシールドが融解する―――ビーム砲を内蔵したシールドが誘爆する前に腕部から切り離した。
ぼんと間抜けな音とともに炎に飲まれていったシールド周辺から素早く身を翻し、ビームの飛来した方向を捉えたクレイは、硬い唾液を飲んだ。
褪せた絵の具の黒の中に浮かぶ漆の黒。真紅の双眸を閃かせるその機体は―――。
※
「08機体ダメージ増加。右脚被弾確認」
「02、フィンファンネル残弾0。エネルギー・リチャージ開始」
「02反射速度、予測規定値内です」
薄暗いシミュレーター管制室。
茫々としたモニターの光を受けたフェニクスの顔は、いつものような凛乎とした様子はなく、つまらなそうに漠としていた。
肩が凝るのだ。石像のように身じろぎもせず、ただモニターの映像を眺めている、というのは―――そして、自分の胸にぶら下がる、手に余るサイズの肉の小鹿どものせいで。
矢継ぎ早に入る報告に耳を傾ける。いつも通り、と言えばいつも通りの様相に、フェニクスは感慨もなくモニターを眺めながら、首を傾けた。
「流石にエレアを相手には分が悪いんじゃあないですかねぇ」
腕組みするフェニクスに、ありのままの感想を素直に述べるクセノフォンも、同じようにモニターに目をやっていた。憐れむようですらあるクセノフォンの声にはフェニクスも同意したい。
―――黒々した宇宙を駆ける光が漆黒の《Mk-V》の腰付近を刺し、小さな炎の花を咲かせる。
1個中隊をさもなく殲滅してみせるようなパイロットとサシでやり合う。考えただけでも背筋が凍るような話に、不意に巻き込まれる形になったクレイに対してはほんの幾ばくか後ろ向きの感情を惹起させた。
「08、頭部メインカメラ被弾。サブカメラに切り替えます」
「こりゃダメみたいだな」
眉をひそませる。渋った独り言をしたクセノフォンが黒い瞳をフェニクスに向けた。
「ちょっと強引過ぎはしませんかね。いくらなんでも」
クセノフォンが声を低くする。ちらとこちらを一瞥する瞳は、歴戦のパイロットであるからこそ抱く生暖かい不安感が滲んでいた。
腕組みしたまま、フェニクスは咳払いを一つした。
察したクセノフォンが身をかがませる。
「予想以上に「奴ら」の動きが速い。「銀の弾丸」が運び込まれたらしい」
クセノフォンの目が見開かれる。
「銀の弾丸」。
まだ連邦政府が出来る以前のアメリカ合衆国空軍で用いられた「切り札」の暗喩の言葉―――。
「それに―――丁度ユートとクレイが着任するぐらいの時期
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