10話
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うに幽らつく《ギラ・ドーガ》を眺めたクレイは、バックパックにインコムを収納するように操作すると、ヘルメットを脱ぐとともに溜息を吐いた。身体中に淀む粘つく疲労感を消すように、深く、深く、息を吐く。
悪くない、と思った。敵機は計4機―――被弾無しで撃破できたのには我のことながら驚きだ。
体調は決して良くなかった―――朝からの頭痛は治りつつあるが、気分の悪さは紗夜への劣情以来治る気配がなかったし、現に今も身体が鉛のように重たくなっているような感触がある。
にも関わらず、今日の操縦は冴えていた。むしろ、体調が悪いがゆえに慎重な操縦になったのかもしれない。
好意的に捉え、カタカタと操縦桿を指で叩きはじめ―――ふと、疑問が湧いた。
長い、のだ。シミュレーターの試験項目を終えて、1分以上過ぎようとしているのに一向にオペレーターからの報告がない。
せっかちでもないクレイは、それから数分ほど漠とCGの宇宙を眺めていた。
―――一向に通信がない。手慰みにカタカタと操縦桿を指で叩いていたクレイは、空いている左手をHUDに伸ばし、通信ウィンドウを開く。
「こちら08、コマンドポスト聞こえていますか? ミッションは終わっていますよね?」
反応は、無い。
ハムノイズと呼吸音だけが鼓膜を撫でつける。
もう一度通信を入れたが、やはり同じ反応だった。
故障か、何か不調か。マジか、と溜息交じりに吐き、コクピットシートに身を預けた。
シミュレーターを使用する際には、1人から2人のオペレーターが就かなければならないことになっている。理由は色々あるが、ともかくオペレーターはつけなければならないことになっている。そして、問題はここ―――オペレーターが試験項目解消とミッション終了の指示をしなければ、シミュレーションを終了できないのだ。
面倒な―――呆れ、イラつき。眉間を指で擦りながら、まぁいいか、と投げやり気味に思惟する。どこの不調かにもよるだろうが、すぐに不調に気づくだろう。10分―――いや、5分もあれば、無為の時間の消費も終わるだろう。それまで精々さぼらせてもらおう―――。
今一度、シートに寄りかかり、ハリボテの宇宙を眺めやり―――気づいた。
デブリが、消えている。
最初、これも不調だろうと思った。だから、クレイは特に気にも留めずに、計器に目を奔らせ―――。
ざわつき。
高鳴る赤い音。
反射的に握る操縦桿。
スロットルを全開に叩き込み、破壊する勢いで踏み抜くフットペダル。
押しつぶされるような負荷Gの最中、一瞬で加速した《Mk-V》のコクピットから背後を振り返ったクレイは、光の牢獄を見た。
四方から襲うビーム砲―――それが何なのかを考える猶予は、なかった。
一呼吸する暇なくコクピットを荒れ狂う警報音。悪態の暇
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