10話
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バックパック・ユニットに装備された平べったい小円状のユニットが射出。真空に漂うや否や、次の瞬間にはまるで何者かに導かれるようにして直覚的な軌跡をなぞる。
シールドのミサイルと背中のビームキャノンによる牽制射すら躱した《ギラ・ドーガ》がサーベルを握る右腕を振り上げる。
「―――こっちのFCSは砲撃戦仕様だってーのに!」
うめき声とともに吠える。無論、聞こえていることだろうが、愚痴の一つ言ったって文句は言われまい。
キチンと、やれれば。
声は自棄気味だろうが、クレイの判断は冷静の元にある。たとえ機動格闘戦に不向きだとしても、クレイに負けの二文字は無い。即座にシールド裏に装備されたビームジャベリンの刃を発振させると、灰色の《ギラ・ドーガ》が振り下ろすビームサーベルの光刃目がけて叩きつける。
接触。力場によって形成される光の剣が防眩フィルターでも殺しきれない閃光を炸裂させ、コクピット内が俄かに揺れる。
クレイは、直ぐにバーニアを焚いた。微弱に炎を吐いた漆黒の陰が、《ギラ・ドーガ》の右側方に僅かに回りこむ。狙いは、ひとえに砲撃支援に回る《ギラ・ドーガ》との間に、味方機である《ギラ・ドーガ》を挟み盾とすることだ。
生じる隙―――この隙は、2秒と持たない脆弱な隙だ。鍔ぜり合う《ギラ・ドーガ》がそれを察知、ビームサーベルを引き、即座に左に回避しようという挙動を見せる。
それで、十分だった。《ギラ・ドーガ》が脇に逸れた瞬間、上下から光の牙が《ギラ・ドーガ》を襲う。頭部と両腕に立て続けに直撃し、小爆破を起こす。頭部と両腕が排除された時点で、MSとしての機能はほぼ刈り取られている―――が、クレイにとってはまだ利用価値がある。慣性に従い、右方に流れていく《ギラ・ドーガ》の胴体を左腕で保持すると、クレイはフットペダルを踏み込んだ。
攻撃警報の音が耳朶を叩く。
―――流石に甘くない、と瞬時に理解し、左腕に保持した《ギラ・ドーガ》の残骸を蹴り飛ばす。同時にスラスターを逆噴射し、骸と化した巨人から離れると、その骸めがけてシールドの切っ先を掲げた。
トリガーを押すとともに屹立する大出力の光軸が《ギラ・ドーガ》を貫き、その向こう、直線に相対していたもう一機の《ギラ・ドーガ》を襲う。寸でのところで《ギラ・ドーガ》は躱したが、それで終いだった。回避挙動を取った《ギラ・ドーガ》を上下に挟撃するように滑り込んだインコムが光軸を奔らせ、左腕を撃ち抜く。AMBAC機動の一瞬の誤差に戸惑う《ギラ・ドーガ》の胴体に、即座にN-B.R.Dの照準を重ね合わせるや、一瞬の間隙もなくトリガーを引き絞った。
亜光速の鋭利な光線が正確に《ギラ・ドーガ》のセラミック複合材を貫き、パイロットを屠り去った。
終わり―――だ。
爆発することもなく、人間の死体が漂うよ
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