8話
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に『調整』されているプルートにとって、数年前のお古ではどうにも辛い。
《キュベレイ》も、それなりに乗りこなしてきた機体だ。それだけに手放すことになるのは残念だった。
「あんたもお預け?」
背後からの声。もうだめみたい、と応じながら振り返ると、ノーマルスーツに身を包んだエイリィが格納庫上部のキャットウォークからふわふわと漂ってくるところだった。
砂金のような金髪のショートボブだが、右側の一部だけが胸まで届くほど長いという奇妙な髪型が目立つ女性だ。
「ヤクトもぼっしゅーだって! クサクサしちゃう」
綺麗にプルートの隣に降り立ったエイリィがむくれた顔をする。
「サイコ・フレーム関係の?」
プルートがサイコ・フレームの名を出したのは、一重に《ヤクト・ドーガ》と《キュベレイ》とは事情が違うからだ。
《ヤクト・ドーガ》は《ギラ・ドーガ》との部品の共有率が高い。故に、整備に関しては容易ではないにしても《キュベレイ》とは雲泥の差がある。
そうなんだ、とエイリィが眉を顰める。
「なんかねー、パラオの方で使うから返せって。新型機開発のためにサイコ・フレーム使うからとかなんとか」
「聞いたとこあります。なんか《クィン・マンサ》のダウンジングがコンセプトらしいですね」
新型機開発―――俄かには信じがたい話だ、と思った。
現在のネオ・ジオンの経済状況を鑑みればそれどころじゃないハズ、だが。
「ったくそんな無駄なことに金使ってる暇あるんなら《ギラ・ドーガ》でも揃えなさいって」
「まぁ、でもサイコ・フレーム採用するってことはそういうことなんじゃない? 最近トップになった人の旗機が欲しいところだし」
腕組みしたエイリィが憤懣をたっぷり孕ませ、鼻を鳴らした。
口ではそう応えたプルートだが、わざわざ旗機をそろえることがどれだけ無駄なことかはプルートも十分知っている。現在の地球連邦軍のように金を湯水のように使えるわけでもないのに―――連邦軍も連邦政府からは大分締め上げられてはいるのだろうが―――、コストも高ければ整備性も劣悪な機体を1機揃えたところで、どうなるというのか。
黒の《キュベレイ》を眺めやる。
溜息が漏れた。
「補給は《ドーベン・ウルフ》とか……ないかなぁ」
エイリィも溜息を吐いた。そして、そろって背後を振り返った。
クリストファーの格納庫にあるのは《キュベレイ》と《ヤクト・ドーガ》に加えて、もう1機。
強大な輸送力を持つコロンブス級輸送艦の格納庫のがらんどうの中で一際存在感を発するMS、《ドーベン・ウルフ》。餌を見つけた蟻が群がるようにして数人の整備士が取り付いている中に、プルートの隊長も交じっているのが見て取れた。
「追加生産もしていませんからね。ガルス系の機体がもらえれば御の字ってとこですかね?」
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