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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
8話
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た。
 フェニクスがいる。
 クセノフォンもいる。
 オーウェンもいる。
 ヴィルケイもいる。
 ジゼルもいる。
 ―――攸人だって、いる、のに。
「私は特に問題はないです」
 声が強ばる。
 多分、自分だけにしかそのようには聞こえなかったであろう。
「モニカから推薦があってな。随分腕を見込んでいたぞ」
 大人のイロを湛えた容を艶っぽく笑む。
 大人の女の笑みは、何かを孕んでいる。そんなことを言ったのは誰だったか。
 フェニクスの笑みも、そうなのだろうか―――?
 そんな理性的な思惟の一方、クレイは顔がにやけるのを感じた。
 照れ。
 そんな羞恥にも似た笑みを隠すように、口元で手を組む。
「それじゃあハイデガー少尉は0930より指定の場所に行ってください。N-B.R.Dは《ガンダムMk-V》用に改修されていますので、ローティ少尉も同時間にお願いします。えーと、それじゃあ他の人は……」
 また、アヤネがタッチパネルを操作する。大型ビームライフルの画面が切り替わり、別なものが表示されるのをどこか獏とした感じに眺めやる。
 少し油っぽい鼻を撫でる。
 期待。
 責任。
 腕の組みを強くしたクレイは、ただ思惟に耽った―――フェニクスの視線を、感じることもなく。
 ※
「もうダメっすねぇ、こいつは」
 薄汚れた整備服の男が気の抜けた声で言う。キャップを深く被った男が視線を上げるのに合わせ、プルートも顔を上げた。
 ガントリーに収まる漆黒の《キュベレイ》。ニュータイプ対応の傑作機も、整備不良には勝てないというわけか。こうなってしまえばただの鉄屑でしかなかった。。
「こっちもできる限りのことはしてはみましたけどねぇ……」
「いやいいよ。元々は私が下手なのが悪いんだから」
 すまなそうに声を落とす整備兵に、プルートは慌てて首を振って、そうして《キュベレイ》をもう一度見上げた。
 元々、《キュベレイ》はガタがきている機体だったのだ。その上、《キュベレイ》は深刻な予備パーツ不足に悩まされる機体でもあった。プルートの乗る《キュベレイ》は量産モデルではあるが、生産数はごく少数―――第一次ネオ・ジオン抗争時に持ち出せた《キュベレイ》は片手で数えられる程度しかない。いずれこうなる運命なのは、少し考えればわかることだ。右足に重心を置きながら、プルートは隣にいるメカマンに気づかれないように、鼻から少し息を吐いた。
「哨戒くらいはできる?」
「まぁできなくはないですけど……あと一回で限度っすね。後はあり合わせの部品でカバーすれば戦えなくも無いってくらいには出来るでしょうけど、ちょっと今ここにある部品だけじゃ無理です」
 一回、か。
 ややきつくなったノーマルスーツの前のファスナーを開ける。元々同年齢の女性よりも発育がいいよう
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