8話
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りフェイスタオルで顔を拭う。本来なら水で洗いたいところだ。次いで、ベッドの枕元に置いておいたポーチから手鏡を取り出し、顔を確認。特に不自然な所がないことを確認すると廊下に出る。
「じゃあ行きましょうか」
壁に寄りかかっていたジゼルに声をかける。ええ、と応じたジゼルが顔を上げ、彼女の瞳がこちらを見る―――剣呑な表情を湛えていた彼女が、不意に噴き出した。
「ごめんごめん。さっきまで我慢してたんだけど」
ひぃひぃと涙目にならながら、パンツの後ろポケットから手のひらサイズの鏡をクレイに差し出す。
さっき確認したんだけど、と思いながらも鏡を受け取り、鏡に自分の顔を写した。
何も問題はないはず―――なんですか、と少し憮然とした態度を取ると、彼女はなおのこと笑った。
「鼻だよ鼻」
言われるがまま、鏡に映った鼻を見る。団子っ鼻というほど丸くはないが、それでもやや丸まった鼻の下―――鼻孔から、黒い筋が一本見えた。それが何なのかは言うまでもない、顔が赤くなるのをありありと自覚しながら、慌てて左手で鼻を覆った。そして、急いで右手を左手の裏へ。
目標はひ弱な毛一本如き。顔を真っ赤にしながら、そのせいもあって理不尽に対象のない怒りを覚えながら、クレイは右手の指さきに微かな感触を覚えた―――刹那、その獲物を指先で捕捉し、一気に引っこ抜く。
ぷちっという間の抜けた音が体内で反響する。
じわじわと涙腺を溢れてくる液体を拭きながら、取りましたよ、と顔を上げる。
「ブハッ」
ジゼルはなおのこと笑った。
慌てて鏡を見直す―――筋が、一本増えていた。
※
結局、地下のブリーフィングルームに着いたのは予定時刻より数分遅れてのことだった。慌てて部屋の前に着き、ドアをノックする。
「クレイ・ハイデガー少尉、入ります」
「同じくジゼル・ローティ少尉、入ります」
口々に言う。入れ、と中から言われたのを確認すると、ドアノブを回した。
こうしてこの部屋に入るのも3回目。ドアを開けると、いつものようにフェニクスが部屋の前で腕組みしていた。
「3分遅刻。随分な身分だな?」
横目で鋭い視線を刺す。弁明のしようもないだけに、クレイは身をすくませた。
気高く、鼻を鳴らす。日本刀のように流麗な瞳が頬を撫でつける。ぞっと身を強張らせた。ジゼルもクレイの隣で身を固くしている。
「まぁいい。イチイチ礼儀だなんだと口うるさく言うまでもないだろう」
次は無いからな―――琥珀色の瞳が無言で語る。
腕組みしたまま、くいとフェニクスが顎をしゃくる。さっさと座れ、ということなのだろう。忙しいらしい―――なおのこと遅れたのは不味かったな、と思いながら、クレイは部屋を見回した。
フェニクスの隣に女性が1人―――部隊専属のオペレーターを務める人だ。あかぶち
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