7話
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咥えると、両手で紙パックを抑え込んだ。
器用に両手の力を咥え、ゲル状の中身を押し出しては可愛らしいその唇が微かに動き、艶めかしく咽喉が上下する。
「なるほど、微妙な力加減ってわけか」
感心したように攸人が腕組みする。
こくこくと首を傾げて肯定する少女の笑み―――彼女を見上げるクレイは、心臓が不定にうねるような感触を理解できずにいた。
いや、理解はしていた。理解はしていたが、それを信じようとはしなかった。
あの時感じた違和感は『そういうもの』ではなかった―――確かに、攸人の言うように少女に幻想を抱いているクレイにとって彼女の存在の衝撃は言うに及ばないのだが。
後で悩もう―――取り敢えずの判断停止をしたクレイは、自分の痴態の収束を確認すると、重たい腰を上げた。
「お腹治ったの?」
「なんとか」
ワザとらしくお腹のあたりを触って、笑みを浮かべてみる。
自分でもぎこちない表情になった自覚があった。けれど、彼女は気にも留めない様子で、ただ、よかったねとだけ口にした。
改めて相対して思う、小さい女の子だ。身長は150あるかないかぐらいだろうか、身長だけならジュニアハイスクールの生徒と言っても納得してしまう。それに、リスがどんぐりを掴むように紙パックを手に持ち、無垢に緑茶を飲む様子とその童顔。むしろまだその年代の少女なのではないかと思ってしまうが、こうしてSDUを着込んでいるのだから成人はしているのだろうが―――。
ふらふらとクレイと攸人の間を赤い瞳が行き交う。何か探しているような、それとも何も考えていないような顔。
ひたとクレイを眼が捉える。
赤い宇宙でもぽっかり空いているのかと思うほどまじまじと見つめてくる彼女にたじろぎながら、なんだい、と必死に応じる。
「んーんー?」
ストローを咥えたまま、首を左右に揺らす。釈然としない顔で、今度は攸人へ―――またも、同じように釈然としない顔をして唸るだけだ。
あんたの方がよっぽど不思議だよ、と思いながら攸人を見る。
攸人の視線も、クレイを捉えた。考えていることは同じことらしい、ということは友人の苦笑いのような、困ったような表情を見れば理解は容易かった。
幾分、クレイはこういう人に出会ったのは初めてであっただけに判断に困るのである。
男2人が判断にあぐねいていると、魔物を飲み下したらしい少女がストローから口を離す。
そろそろ時間、そういって時計と2人を見比べる。
確かに夜も遅い時間だ―――空を見上げれば、星々の数も気持ち少なくなっている気がした。
「確かに遅いなぁ。送っていこうか?」
気さくにこういうことを言えるのはクレイには難しかった。下心なぞ感じさせない気配りができるのは素直に感心する―――同時に得も言えぬ哀愁を感じながら、クレイもわざとら
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